教育福島0075号(1982年(S57)10月)-020page
とにより、授業と総合実習との関連がより明確になり、より密接となった。
五 おわりに
改善を試みて強く感じることは、学習の目標をしっかり把握させ、一人一人の生徒に活動の場を与えてやることが大切だということである。
今後も更に個別化の検討をすすめ、一人でも多くの生徒により興味を持たせ、わかる授業の指導研究に取り組んでいきたい。特に限られた時間のなかで、個人差が生じないよう実験カードの結果のまとめや考察の記入のしかた等、徹底した指導をしていきたい。実験カードに講評を加え、添削することは、大変であるが、一言書いてやることが、生徒の学習意欲の向上に役立つことでもあるし、教師と生徒のふれあいにもなることなので、是非とも継続していきたい。
今後、食品加工科での基礎的、基本的学習内容の精選とそれに合った実験カードについて更に検討を加え、形成的評価に留意し、生徒の学習過程を大切にした授業の改善を図っていきたいと思う。
これからもこうした試みを継続研究し、本校生徒の実態に合った学習指導のあり方を追求し、効果をあげるよう努力していきたい。
社会
現代社会における聴き取りの教材化
=祖父母・父母たちからのメッセージ=
福島県立福島高等学校
教諭 山名隆 弘
本校は昭和五十五、五十六両年度に福島県教育委員会指定の『現代社会』研究校として、「生徒の実態に応じた指導計画はどうあるべきか」という主題を掲げて研究を進めてきた。この主題設定の基本的な考え方として、次の三項目を重視した。
(1) 生徒の実態に即して一人一人の学習意欲を高め、課題意識をもって主体的かつ積極的に活動に取組ませるにはどうしたらよいか。
(2) 学習活動を通して「社会」及び「人間の生き方」に対する生徒の適切な思考力や判断力を育成し、彼らが生きて行く上において、自ら何らかの示唆を得ることができるように指導するためには、どのような指導計画を立てればよいか。
(3)従来の教育理念や指導方法等について発想の転換を図る。
「生徒の実態」を把握するために、詳細な事前調査を実施した。この結果を分析し、設問ごとの考察を積み重ねて、四単位の学習主題を設けた。
一 実践事例の概要
研究発表会の当日、年間指導計画から二つの学習主題をとりあげ、公開授業を実施した。その一例を次に示しておく。なお、この主題は、『学習指導要領』での大項目「現代社会と人間の生き方」・中項目「人間性活における文化」のうち、小項目「現代の文化」の学習目標と基本的事項をふまえて作成している。 (学習指導案省略)
−−説 明−−
主題設定の理由 最も力点を置いたのは「学習の過程で肉親との対話を経験させたい」といらところである。主な理由として、はじめに触れた通り、研究上の三つの基本線に沿うものだと考えたからである。更に、私自身が十年このかた続けてきた『日本史』における「祖父母や父母が語る身近な歴史」という聴き取り学習の効果を、ここでも期待したからである。一生徒は、日本史の報告の末尾に、「震災と戦争という二つの大事件を生抜いてきた祖母の人生が、とても重く感じられてなりませんでした。歴史は語りつがれるものであるとよく言われますが、その通りであると私は思いました。祖母の口から出る一つ一つの言葉には、どんな歴史の本よりも深い深い真実の重みがあり、また祖母の人生の一端にふれることができ、大変よかったと思いました」と述べている。
このように異なる世代間の対話の輪が広がれば、素晴らしい。
本時の目標何をもって「伝統的」とするかについては議論も多い。祖父母や父母たちが必ずしも、数世代の昔から引き継いだものばかりではないからである。しかし、生活文化自体が時代とともに変容するということを認識させるのは重要であろう。その中から、文化変容の態度をも考えさせたい。
「次時への発展」とあるのは、次の主題に「戦後の日本が得たもの、失ったもの」ということを設定しているからである。
学習内容 学習活動の各項目と相まって聴き書きの便宜を考慮して一つ一つをカードにして配布した。この用紙には語り手の生年・出身地を記入させた。また「資料および資料所在目録」を記載するカードも用意した。特に、戦前の住居の間取図や生活文化を知る手がかりとなる資料を要求したのである。
学習活動 報告内容を詳細に検討しごく一般的な事柄で、よくまとまっているものを発表させるようにした。独特な事項に関しては、一層堀り下げて調べ報告させた。
指導上の留意点 聴き取りの際、録音をしていた者はいなかったので、協力が得られそうな家庭に改めて依頼した。昔の「炉端」を中心とした生活を語った一祖父の声は方言も生々しく授業のヤマ場をつくるのにふさわしかっ