教育福島0075号(1982年(S57)10月)-028page
同じ傾向を示した。例えば、新入生英語学力診断テスト(昭和五十六年度)の場合、平均点五十八・六を含む五十点台に百十二人、六十点台三十七人、七十点台六十一人、八十点台三十七人、九十点台九人、下位グループとしては四十点台七十三人二十点台、三十点台合計で四十人近くあり、平均点を中心として、上位グループ、下位グループの格差が非常に大きいことがわかった。
このように習熟の度合いの格差の大きい生徒たちを同一教室で同時に指導することはかなりの困難があり大きな指導効果を期待することはできない。
上位グループの生徒に対してはもちろん、特に中・下位グループの生徒には、特別の指導が必要である。実力差の大きい生徒たちを同一教室内で、習熟の度合いに応じて学習させることは不可能ではないにしても、非常にむずかしく、むしろはっきりと習熟度別の講座制にして指導した方がより効果的であろうという結論に達した。
二 習熟度別学習指導に踏み切るまで
(昭和五十六年度の経緯)
(一) 英語科内で出された問題点
年度末・年度初めの多忙な時期ではあったが、五回ほど英語科会をもち、話し合った。問題点と内容は次のとおりである。
1) 習熟度別学級編成による指導
実施するということになれば、それに付随して種々考えなければならない問題点や困難はあろらが、趣旨には賛成であるとの全員の結論であった。
2) クラス編成方法及び実施時期
第一学年一〜三組、四〜六組、七〜九組のそれぞれ三クラスを合併しその中からそれぞれ普通クラス(中
・下位グループ)を二つ、発展クラス(上位グループ)を一つ作る。英語六単位中リーダーに当てている三単位について実施する。編成に当たっては、生徒本人の希望を優先し高校入試の英語の得点、県新入生英語学力診断テスト、第一学期の成績などを参考資料とする。実施時期は第二学期からとする。これは全教員の理解と同意を得るため、また生徒への趣旨説明と諸準備のための時間を見込んだものである。
3) 評定について
授業は普通クラスと発展クラスは別々に行うが、テキストは同じものを使用し、進度も極端にずれることのないようにする。定期考査の出題に当たっては一部選択問題を入れるが大半の問題は共通にし評定する。成績と生徒の希望により第二学期末に一部入れ替えを行うこともある。
4) 授業交換ができなくなること
三つのクラスが同時展開の授業になるので、出張等の場合、授業交換は実際上ほとんど不可能になる、として教務部所属の英語科教員から問題提起がなされた。当初英語六単位全部を習熟度別講座にするつもりであったのを、半分の三単位だけ実施するようになることで、ある程度解決できる。また、六単位中習熟度別講座により四単位、自然学級二単位の授業を併行して実施することによって、生徒も指導者も両者を対比することができるという積極的意味を持たせた。
(二) 全教職員の共通理解を図るために
このような英語科の結論を、校長、教頭、実施学年である第一学年会に話し、更に教科主任会議に提案した。各教科主任を通して各教科で検討し、再び教科主任会議で集約した。結果は、大方はその趣旨に賛成であったが、一部反対意見が出た。理由は、1)習熟度別授業とは結局能力別授業ではないのか2)上位の生徒たちだけの実力向上をねらった進学対策ではないのか3)下位の生徒に対しては差別教育にならないか4)下位クラスに入る生徒たちに劣等感を持たせるだけで、あまり教育的効果は期待できないのではないか、また上位の生徒には優越感意識を持たせることになるのではないか、ということであった。
ことは英語という教科指導法の問題であり、また、ほとんどの職員が賛成であっても、学校全体、全職員の意志の統一をみないままに性急にことを進めることは、長い目で見た場合、学校として、また教育上も望ましくない、という考えから、昭和五十六年度は、事前研究、準備の期間とし、前記1)〜4)の問題点を解決するために数回に及ぶ校内研修会を開いた。この結果、昭和五十七年度入学生から実施の方向に固まりこれが職員会議で決定された。
「生徒に劣等感を持たせることになり、教育的には逆効果ではないか」という懸念に関しては、昭和五十四、五十五年度文部省指定高等学校学習習熟度別指導研究校・県立須賀川女子高校の研究成果報告書が参考になった。その中で習熟度別講座制についての意識調査があり、その中で「基礎講座では九十パーセントの生徒が、満足か、それに近い状態である」「今までよりわかるような気がする」「自分の力に合っている」などの理由が目立つ。と報告している。また興味の変化については、基礎講座の生徒のうち四十二パーセントが「前より興味がわいてきた」と答えている。また習熟別講座による授業についてのく肯定的な感想〉の一つに、「普通の授業でわからないことがたくさんあるが、基礎クラスに行くととてもよくわかるようになる。はじめはいかにも能力のない者だけが基礎クラスにいくようだったが、私は基礎クラスにはいってよかったと思う。これからもつづけてほしい」という報告があった。
三 実施に当たって
(昭和五十七年度)
(一)実施の方針