教育福島0075号(1982年(S57)10月)-041page

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東西南北

 

十一回目の交歓会

県中教育事務所

 

山の学校と都市の学校の生徒が、互いに家庭を訪問し、生活経験を広めるとともに、奉仕の精神を育てよらとして始められた、南会津郡伊南村立伊南中学校と郡山市立小原田中学校との交歓会は、今年で十一回目を迎えた。

郡山市街地の南部に位置する小原田中学校と美しい流れの伊南川のほとりにある伊南中学校は、JRC活動の活発な学校で、交歓会を始めるよらになったのも、JRCの打ち合わせ会がそのきっかけである。

交歓会は、毎年二回行われる。新学期が始まって間もない五月に、伊南中学校二年生全員とPTAの代表が小原田中学校を訪れ、フォークダンスで気分をほぐしてから交歓会の行事が始まる。

生徒会主催による歓迎集会、JRC活動の紹介、宿泊の決まっている生徒の対面式と続く。両校の生徒にとって最も緊張するのがこの瞬間である。

事前に電話や手紙でお互いに連絡をとり合ってはいるが、顔を見るのは初めてで、両校の担任教師から名前を呼ばれ、大きな拍手の中を体育館ステージの前まで進み、手を握り合って初めてにっこりするのである。

対面式が終わると、宿泊先の生徒のいる学級に分かれて学級交歓会が行われ、夕方五時に宿泊先の生徒の案内でそれぞれの家庭に分宿するのである。

各家庭では、特別のもてなしではなく、普通の生活を見てもらうことになっており、家族の一員として一夜を過ごすのであるが、中学二年生にとって生涯忘れられない経験であったことは卒業生たちの語るところである。

翌日は、午前八時からのお別れ集会で、両校の校旗を、校歌合唱とともに高々と掲揚し、伊南中学二年生は阿武隈洞見学へと出発するのである。

夏休みになると間もなく、小原田中学校二年生の伊南中学校訪問が行われる。

梅雨明けの七月下旬、中体連行事の合間をぬうように伊南村を訪れる。国道四十九号線から只見川沿いをさかのぼり、途中、田子倉発電所を見学してから伊南中学校へ。午後一時、全校生徒の出迎えるなかを体育館へと進む。

そこには、村長さんをはじめ、村民全員の歓迎ムードが漂い、都会っ子としての小原田中生徒もいささか緊張が続く。

生徒会主催の歓迎行事の後は、スポーツを通した交歓会や伝統芸能のもてなしをうけて緊張もほぐれ、宿泊先へと向かうのである。

宿泊先は、第七回ごろまでは、全員伊南中学校生徒の家に分宿したが、今は民宿等を利用することになり、夜は学校だけでなく、村を挙げての交歓会が行われるようになっている。

前夜の楽しかった思い出を胸に、小原田中二年生は、伊南中学校に別れを告げ、尾瀬へと出発する。尾瀬沼、尾瀬ヶ原への道は厳しいが、昨夜までの楽しかった思い出話の終わらないうちに、目的地の原の小屋にたどりつくのである。

過去十一回にわたる交歓会のうち、生徒が参加したのは十回であるが、最初の生徒は二十四歳になろうとしている。

この間、幾多の困難にも、直面したが、その都度、PTAや先輩たちが知恵を絞りあって続けられてきた交歓会である。今では、家族間の交歓や地域活動での交流もみられるようになってきた。

毎年訪れる両校生徒の顔ぶれが変わっても、一年先輩の三年生が、きちんと計画を立てて実行に移し、卒業文集に「楽しかった」、「よい思い出になった」、「一生忘れられない」と、書き残していった生徒は、得難い体験をもったのではなかろうか。

(小原田中学校教諭 駒木根利信)

 

交歓会の風景

交歓会の風景

 

 

 


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