教育福島0075号(1982年(S57)10月)-044page
グループ研究
わかる授業の実践と評価
福島県組織的理科教育研究グループ
一 はじめに「わかる授業とは」
授業の一時間一時間は、教師にとっても生徒にとっても二度とくり返しのきかない大事な時間である。そら思いながらも、意に反して授業が思いどおりに進まない。それが生徒の学力、学習意欲などによるものとしても、教師の授業に対する反省と工夫の中でのり越えねばならない、という主旨から、
「わかる授業を行うにはどうしたらよいか」をテーマにとらえて、十五名の研究メンバーが、それぞれの立場において研究実践を進めた。そこでまず、「わかる」ためには「わかりたいとする学習意欲」と「わからせるための教材」が準備され、そこに、「わからせるための適切な指導法」が加わり、全体的に調和を保ちながら授業づくりを行うことが必要であるといら、「わかる」ための要素を洗い出すことから出発した。
二 学習意欲を高めるためには
(一) 学習成立の要素を求めた授業実践
生徒の多くは、論理的な概念思考が困難である。理科に対する意識を調査し実態に応じた学習意欲を喚気させるために自己評価させるなど充実した楽しい雰囲気の授業を実践した。(図1)
(1)化学授業の展開…講義は三十分、残りの二十分は生徒の活動とする。
(2)化学実験…独自の実験書を作りできるだけ多くの実験をとり入れる。
(3) 授業の工夫1)授業の最初の一時間を大切にする。2)化学史を授業に入れる。3)生徒に自己評価をさせる。
(二) カウンセリンマインドの授業
生徒の立場から生徒をみつめ、その気持を正しく汲みとる努力の中で、生徒の心にふれ合い、そこに信頼関係を築き、生徒一人一人を大切にして、自己実現を促すよう配慮された授業を展開することが、カウンセリンマインド(相談的態度)をふまえた授業である。生徒の意識調査をもとに、授業の改善を試みた。 (図2)
(三) 学習到達度のグループ編成授業
物理の学習意欲が低い原因として、物理は難しいという中学時代からの印象、進路志望達成のために、不必要な科目である、計算力に乏しいこと、などがあげられる。
このような原因を少しでも取り除ければ、より意欲を高めることができると考え、到達度に応じたグループを編成し、物理をもっと日常生活に密着させよう、刺激を与えて意欲を持たせよう、十分に時間をかけて補説をしてやろう、ということを試みた。
図1教科が好きになるかきらいになる理由
図2わかる授業
三 わからせる教材の構成
(一) 個を生かす学習構造の基本理念と指導生活経験や既習の知識は大部分体系づけられていない。これを学習によって体系づけられれば、必要な時必要な知識としてすぐに取り出せる。それには図5のように経験レベルと思考レベルの間で学習は加速され、思考の深まりとともに回転半径が増し、体系化された知識量−知的エネルギーの増大が期待できる。このような考えにより教材の構成と授業の展開を実践した。(図3)
(二) 体験的・作業的教材を多量に取り入れた指導−課題研究の授業実践1)テーマに対する教師側の対応2)生徒の自主的活動の尊重3)施設、設備、器具、器材4)探究の過程を経験させ、論理的展開をしたいという教師の気持