教育福島0076号(1982年(S57)11月)-036page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

第30回

福島県図書館大会から

一報告−

 

県立図書館館外奉仕課長

赤座信道

 

図書館コーナー

 

図書館コーナー

 

福島県図書館大会も三十回を迎え、相馬市図書館において十月五・六の両日開かれた。ちなみに第一回大会は昭和二十八年福島市、県立図書館を会場として開かれ、「県立図書館の充実強化策について」、「県図書館大会を県教育委員会において年一回開催してほしい」等の要望が提案され、以来関係者の努力によって、今日まで関係者、利用者が一堂に会して、図書館が当面する諸問題を討議する大会となってきている。第十二回の二本松市までは福島県公共図書館協会総会と大会と併せて開催していたが、昭和四十年、第十三回郡山市開催から大会を図書館振興の行事として独立して、記念講演、事例発表、分科会等として図書館関係者の年に一度の最大の行事として今日に至っている。

宮城県との県境の地相馬市ということであったが、田島町をはじめとする会津、中通り、いわきの各方部から七十余名、地元五十余名、計百三十余名の参加者があり、年々関係者の意識が高くなっていることを示していると感じられた。

開会式においては、今野相馬市長の歓迎のことばに続いて、永年図書館に勤務された中島京子さん(郡山、クローバー子供図書館)根本悦子さん(いわき市勿来図書館)が表彰された。

記念講演は、今、図書館関係者がさけて通ることのできない漫画の問題について、子ども文化研究者の斎藤次郎氏を招いて「こどもと漫画」と題した二時間の熱弁は、参集者に大きな示唆を与えた。その要旨は、従来の漫画観はそれを読んでも、それが動機となって読書に引き入れればよいというものであったが、今日では大人も漫画そのものを理解することによって、子どもの夢を理解することが大切ではないか、そして肥大化した漫画も読者によって淘汰されていくであろう。また漫画は絶対にいけないという信念を持つならば、あくまでそれを貫くのもそれもまたひとつの態度ではないだろうか。

事例発表は須賀川市の四条館長から「ブックモビル四年の歩み」と題して小図書館の対外活動の実態を紹介された。少ない職員をやりくりしての移動図書館活動は無理はあるけれども、身近に本を借りられると利用者の喜びの声には応えることが大切であり、巡回日数、新刊書の増加がほしいという現場の切々たる声が披露された。

保原町中央公民館の佐藤館長からは公民館建設にあたって、全体の中で図書館の位置づけ、活動をじっくり検討し、図書館の位置、図書館ができるまでの奉仕活動をふまえた構想は、佐藤館長ならではのものがあり、図書館未設置町村の公民館においては学ぶべきことが多いことと思われた。

利用者の発表としては地元の利用者の中から青田晟一(青年)さんが、「ことばの読書会」と題して、フランスの図書「ことば…倫理」をテキストとして、相馬市内だけでなく東京あたりまで会員がいて真剣に思索している姿は注目された。反面現代の若もの読書はアクセサリー的であって、なんとなく読んでいるという実情には、若者を支えているものは、何なのかと頭をかしげされるものがあった。

分科会は「地域に根ざした図書館活動をめざして」のテーマのもとに、図書館、公民館、利用者の三分科を前日の事例発表を中心に行った。

◇ 図書館部会では、図書館奉仕はあくまでも利用者側に立つべきであり、そのためには開館日、開館時間等は利用者が最低利用し得る時間まで開くべきであり、移動図書館の巡回サービス、PRのための館報の発行等は是非実施すべきであるという意見があった。

◇ 公民館図書室部会では、図書館の代行として十分機能を発揮しているところ、一方未整備のところと各館の格差が大きすぎ、なかなか意見のかみ合わないところがあったが、将来の町村立図書館を目ざし、図書館活動を実施すべきであるとのことであった。

◇ 利用者部会では、読書活動を支えている人達は、都市中心であり、その人達の大半は先進地において図書館利用の経験を持つ人たちによってなされていて、その地域の人たちを如何に参加してもらうかに今後の課題があるように思われた。

二日間をふり返って、年々参加者数の増加と真剣な討議は、本県にもようやく図書館時代の到来を感じさせると同時に、提起された問題をひとつひとつ解決して明年に資したい感を強くした。

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。