教育福島0077号(1982年(S57)12月)-020page

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塁や溝が数十メートルにわたり遺存していることから、これらの時期や性格の追求を開始した。目下調査中であるが、すでに溝はかなり本格的なものであり、土塁も良く残っていることが判明している。

また、郭内の竪穴住居跡からは、一般の住居跡にはみられない灰粕水瓶片や大形の刀の形代などが検出されつつある。布目瓦も検出されていることから、付近に礎石を持つ建物跡や掘立柱建物跡があることが予想されており、今後の調査が期待される。

 

2 塩坪遺跡(高郷村)

 

県立博物館の展示資料の調査のための発堀調査である。旧石器時代の遺跡の発堀は県内でも例が少ないが、今回の調査の記果、後期旧石器時代後葉の石器の主な種類のものがすべて出土している。ナイフ形石器・エンドスクレイバー・彫刻刀形石器・石刃などである。整理がすすめば今から約一万五千年前の時代の生活や地域性が明らかになることと思われる。なお、遺跡断面の剥ぎ取りを行っている。

 

3 薄磯貝塚(いわき市)

 

A地点の緊急発堀調査が三か月にわたり実施され、多くの成果を得ている縄文時代後期から弥生時代中期にいたる時期の貝塚で、人骨や家犬骨をはじめ各種の動物遺体の骨が検出されている。ことに弥生時代に属する骨角器の内容が明らかにされたことは貴重で、成果の発表が期待される。

 

4 穴沢遺跡群(郡山市)

 

西田地区での国営農業開発に伴う発堀調査で、各時期の各種の遺跡や遺物が検出されている。穴沢遺跡では、木材を使用した古代井戸が明らかとなって、県内の類例を増加させた。馬場中路遺跡では、縄文時代後期初頭を中心とする埋設土器が点在しているようすが明らかとなり、さらに時代は新しくなるが、八稜鏡がピット内より検出された。

 

5 下堀際

 

遺跡(会津高田町)

縄文時代の宝庫といわれる会津地方で、当地方としては調査例の少ない奈良、平安時代の竪穴住居跡群が調査によって明らかになった。県教育委員会の委託を受けて(財)福島県文化センター遺跡調査課が発掘を行ったもので、竪穴住居跡十四軒、土坑九基、ピット七個のほか溝跡が発見された。一般に他地方に比べ小振りな住居跡であるのは、雪の多い会津の一つの特長であろう。

 

(二) 遣物保存処理

 

急激に増加しつつある遺物の保存と活用については、今後の研究に待つ所が多い。その中で、変質しやすい鉄器や木器の永久保存のための加工処理は当面の課題でもある。試行錯誤を重ねながらも、その方法を積み重ねて行かねばならない。金銅製品については、全国でもまれな遺物である双魚佩(真野二十号墳出土)の保存処理を、県教育委員会の依頼により東京国立文化財研究所で行った。また、現在御山千軒遺跡出土の大量の平安時代の木製品を(財)元興寺文化財研究所に依頼して保存処理中である。いわき市では、国庫補助事業として、八幡横穴群出土の金属品の保存処理を、今年度と来年度の二カ年にわけ計六〇〇万円で同様に保存処理中である。今後とも増加の傾向にあると言えよう。

 

(三) 発掘技術者講習会

 

国の埋蔵文化財センター主催の各種研修については、積極的に参加をすすめてきた所であるが、本年度は次の課程の受講者があった。一般課程三十八日間(磐梯町教委山野憲雄。須賀川市教委塚目充也)土器・陶磁器調査課程十三日間(遺跡調査課橋本博幸)、遺跡測量課程二十日間(遺跡調査課石本弘)、保存科学基礎課程十四日間(いわき市教育文化事業団樫村友延)埋蔵文化財基礎課程五日間(いわき市教委鈴木庄寿)

県教育委員会による「第十回福島県発堀技術者講習会」は、埋蔵文化財の発堀調査体制の強化と保護処置の徹底を期すため、専門知識と技術の向上を図ることを目的として、今年度は会津高田町教育委員会との共催により実施された。

八月四日から十三日まで(実質三日間)中央公民館を主会場として開催され、参加者は十九名であった。

講習内容は、調査に関する各種講義と、分布調査から発堀調査までの実習を中心とし、会津若松ザベリオ学園高校教諭長尾修による「縄文時代の会津」東北大学文学部助教授須藤隆による「東北地方の弥生文化」の二つの講演があった。とくに最終日の後者の講演は公開としたため、約四十名の参加者があった。

なお、現地研修として墓料遺跡・大塚山古墳・同出土品などを見学し有意義な講習会であった。

 

薄磯貝塚鹿角出土状況

薄磯貝塚鹿角出土状況

 

 

 

 


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