教育福島0078号(1983年(S58)01月)-009page

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勝利の直後に次の作戦が……(共同通信社提供)

勝利の直後に次の作戦が……(共同通信社提供)

 

る心を持たす、根性を養う、謙虚さを身につける、膜のできた人間を作る。このように青春の一ぺージを、甲子園を目標にその練習の過程で、彼らになにかをつかんで高校生活を送ってもらいたいと願うのは、私ひとりだけではあるまい。

スポーツには「運ぶ」という意味がある。身体を運び、心を運び、立派に大人の世界で生活の可能な人間を育ててい)・たいと願う。また、野球を通じて、彼らに自分の人生観を確立させてやることも忘れてはならない。

野球というスポーツは、相手の「ミス」を利用して勝負するスポーツといわれ、一つのミスが勝負に大きく影響する。その意味では「まったなし」の世界である。「鍛練は千日の行、勝負は一瞬の行」といわれるゆえんである。彼らは、野球という機会を通じて人生はまったなしということを悟ったはずで、全国優勝の過程の中では、いろいろな苦しい場面に遭遇したわけだが、その一コマーコマで「くじけてはいけない」「一から出直しだ」と自らの心を励まし、耐えてきたその結果が全国優勝であり、それはまた「人生は失望からは生まれない」という実感でもあったろうと思う。

野球を通じて、いろいろの体験をする。そしてこの大きな壁を見事クリアしたときに、心が豊かになりへそこに信頼感が生まれてくる。その集約されたエキスが、それぞれの人生観であることを疑わない。

あえていう。「たかが野球ではなく、今こそされど野球」であると。このむずかしい野球の世界を生き続けることが、私の運命なのかも知れない。

 

ていげん

 

 

 


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