教育福島0081号(1983年(S58)06月)-035page

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知っておきたい教育法令

 

判例紹介(総務課管理主事古関隆史)

 

一 はじめに

 

本年四月二十一日、最高裁判所第一小法廷(五人の裁判官で構成)は全員一致の意見で、元県立磐城高校生に係る懲戒処分取消請求事件について「学校側の処分は正当」とした一、二審判決を支持して、元磐城高校生の上告を棄却した。今回は、この事件の概要、判決要旨を紹介するとともに、本判決のもつ意義を考えてみたい。

二 事実の概要

 

昭和四十六年、県立磐城高校三年生であった原告は、いわゆる三里塚闘争に参加する等のため、十日間学校を無断欠席したので、学校側は同年十月無断欠席を理由に家庭謹慎処分にした。

原告は、この処分は政治活動に対する弾圧であるとして服さず、登校して処分撤回を求める抗議集会、デモ等を続け学校の授業にも支障を来すことになったため、学校側は同年十一月無期停学処分にしたが、更に抗議のハンスト支援等に及んだため、最終的には同年十二月退学処分を行った。

原告は、これらの処分は重大かつ明白な暇疵があり違法であるので、いずれもその効力を有しないものである、として処分の取消を求める訴訟を提起した(昭和四十七年一月十五日)。

 

三 一・二審判決

 

一審の福島地裁は、昭和四十七年五月十二日、約四カ月の集中審理の結果校長が行った懲戒処分は違法でないとして、原告の訴えを棄却した。

二審の仙台高裁は、昭和五十四年五月二十九日、一審判決を支持し、原告の控訴を棄却した(本誌七十九年一月号参照)。そして、原告の上告により本件の舞台は、終審裁判所たる最高裁へと移された。

 

四 上告審判決の要旨

 

〈原告側の上告理由の第一〉本件係争の処分(無期停学と退学)の前提となる家庭謹慎処分は、単なる欠席を理由とするもので、学校教育法一一条(生徒の懲戒〉の懲戒事由となり得ないし、また、この処分は政治活動を理由とするものであり、教育基本法三条(教育の機会均等)、同法八条(政治教育)、及び憲法一九条(思想・良心の自由)、同二一条(集会・結社・表現の自由)に違反する、と主張する。

これに対して最高裁は、「高等学校の生徒については、学校当局において授業への出席を要求し、これに従わないで正当な理由がなく授業を欠席した場合は、これに対しその規律権に基づく処分をすることができるものというべきであり、また、生徒が政治活動を行うために無断で授業を欠席することが正当な理由のあるものとはとうていいうことができない」とした。

さらに、この処分は「上告人の正当な理由のない無断欠席を理由としてされたものであって、政治的活動をしたこと自体を理由とするものではなく……生徒が授業に出席することを要求されている以上、その反面として、授業を欠席して右授業時間に他の行動をする自由を拘束されることとなるのは当然であって、そのためにその限度で政治的活動をすることができなくなっても、これをもって政治的活動の自由に対する侵害ということができない」と判示して、憲法違反の主張を斥けた。

〈上告理由の第二〉 本件係争の各処分は、学校教育法一一条、同法施行規則一三条一項(懲戒権)に違反し、また、校長の裁量権を逸脱したものである、と主張する。

これに対して最高裁は、二審で認定した事実を踏まえて「本件係争の各処分は、被上告人の裁量権の範囲内で行われたものであって、上告人の磐城高等学校の教育体制批判に対する報復的措置としてされたものではない」として、二審の判断を支持した。

 

五 おわりに

 

判例とは、判決の先例である。とりわけ最高裁判所がひとたび判決で法令の解釈、適用を示せば、その変更は最高裁判所裁判官全員で構成された大法廷でなければできないほどの重みをもつのである。

本判決も、認定された事実のもとに一つは、正当な理由がなく欠席した場合、校長は、規律権に基づいて懲戒処分できるとし、二つは、生徒が政治活動を行うために無断欠席することは正当な理由にあたらないと判示しており、これらの点について先例的意味をもつものといえる。

 

 

 


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