教育福島0082号(1983年(S58)07月)-019page

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(二) 研究主題設定の理由

 

近年、学業不適応に陥り中途で挫折する生徒が見られるが、これらの原因や背景は、必ずしも高校入学後にだけあるものではなく、中学校あるいはそれ以前に学習面や生活面でなんらかの問題を抱えている事例も多く見られ、生徒指導が高等学校だけの領域では対応しきれないという認識が高まりつつある。

勿来高校では、中高連携についての研究指定を契機に、特に中学校との連携の具体的方途を探りながら、生徒指導と学習指導の両面にわたる連携を深め、高校生活への一層の適応を図ろうとしている。

 

二 研究の組織と方針

 

(一)研究組織

 

研究を進めるにあたっては、即全教職員が一体となって取り組むこと、その中核的組織として、「生徒指導研究委員会」を設置した。

その構成は、生徒指導部、教務部、進路指導部と、学年主任の十三名である。

更に、その構成員の六名からなる「常任委員会」を設け、研究のまとめに当たることとした。

また、研究の進展に伴って必要に応じ、委員会の中に専門部会(生活・学習・進路指導)を設ける。

 

(二)研究方針

 

不適応の要因となる諸問題やその背景を、「入学の動機」、「目的意識」「学習意欲」、「家庭環境」、並びに「保護者や生徒の学校像」等の調査から突ぎとめ、これらを基にして教師自身が中学校との連携の上に立って生徒理解や学習援助の充実と向上を図り、適切な指導の方策と体制を確立し、生徒一人ひとりの自己解決能力(自己指導力)を養う。

このような研究方針について、校内の共通理解を図り、実践の体制を整えるとともに、近隣の中学校に対し、一層の理解と協力を要請する。

さしあたって、地元の中学校五校には、中学生や教師の意識調査の実施と公開授業に基づく研究協議の開催等についての協力を依頼した。

 

三 研究の概要

 

(一) 基礎調査からの考察

 

研究方針に基づいて、質問紙法による調査を実施し、考察を行った。

1 中学生の高校理解度について

地元中学校に調査を依頼し、八七一名の回答を得た。

高校教育を受ける目的については中学生の多くが高校入学後、なにかを学ぼうと考え、また、その意欲を持っていると考えられる。

しかし、その反面、「ほとんどの人が行くので特別な目的を持たなくとも当然行くべきところ」と答えている中学生が、一六・五%あり、目的意識の希薄な一面がうかがえる。

高校における学習面、生活面については、かなり理解を示しているものの、友だちづき合いや自分の趣味を生かすことになによりの期待をかけているなど、高校生活に対して安易で自己中心的な期待を抱いている傾向が強い。

2 在校生の学校生活について

高校生活における目標や期待感など、目的意識については、一半数以上の生徒がなんらかの目的意識を持つているとみることができるが、「特に持っていない」、「全然ない」と答えている生徒が、四三・七%に達している。

本校への進学を決定する際に、親あるいは先生に勧められたから、と答えた生徒が二一・三%あり、本校を選んだ理由として最も多い回答は「自分の成績や学力に合っているから」が、四五・一%を占め、次いで「本当は別の高校に入りたかったが仕方なく」が、三一・七%である。

学業生活への適応度についてみると、約半数の生徒は、教科書の内容が高度であると感じ、数学、英語、理科は特に難解と答えている。

授業について、「理解できないものもある」が七〇・四%、「理解できない」と答えた生徒が一三・二%あり、教材としての教科書の取り扱いの配慮や授業に対する教師の取り組み方などが今後の課題として認識される必要があろう。

3 保護者の意識について

保護者の学校教育全般に対する考え方や生活指導への関心について調査した。その結果は現在の学校教育については、六五・七%の親が「だいたい満足している」と答え、父母のそれぞれが同率を示している。

「不満がある」は三三・一%で、知識偏重や画一的な教育であると解して不満を示しているようである。

4 中学校教師の意識について

地元五中学校を対象に調査を依頼し、一二二名の回答を得た。

基礎学力のない生徒が、高校に進学していると思っている教師が九三・三%に達し、また、学力の低い生徒に対する配慮について進度を加減していないとの回答が四六・一%あり、現状ではこれらの生徒に対する個別指導が困難な状況にあることを物語っており、基礎的な学習が、未消化のまま高校に進学してくる生徒の多いことがうかがえる。

中高連携については、高校が中学校からの情報をもとに生徒に指導を行うことに対し、「積極的に協力する」との回答が九三・三%を占め、中高連携への関心の高さを示している。

また、中高連携を阻む要因につい

 

 

 


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