教育福島0082号(1983年(S58)07月)-027page
随想
クラスの絆とは
沢田昭子
「平均点を計算してみてください」「平均点十点の差は大きいよ」とA先生の発言。「でも、これまでいろいろな項目で吟味して分けてきたんだから」とB先生。
春休みに入ると、どこの学校でも見られる風景です。新入生の組分けより二年進級学年のほうが生徒のことをよく知っているだけに容易ではないと思われます。リーダーの配分からピアノ伴奏のできる生徒までの細かい配慮までしてその結果、満足いかずコンピューターに頼りたくなる心境に達するのです。しかし、お互いに知恵を絞り合って検討を繰り返し生徒の能力を最高に生かすために苦労を重ねた組分けであるからこそ多少の目こぼしは、その後の指導で補おうとする責任と情熱がわいてくるような気がします。
中学校は、大抵二年進級時に組編成をします。一年間の観察に基づいた等質な学級編成をするためと思われます。また、知識技能を修得するだけでなく良き社会人の育成であることは、周知のことです。人間社会を生き抜くために大切なことの一つは、人間関係の絆だと思います。多くの人と接し、協力し合い、陶冶し合い、時には、反目し合ってお互い成長していくのだと思います。自分に味方する、自分に都合のよいものだけが自分に益するとは一限りません。時には、苦い薬も他山の石も人間の成長の糧となります。だから多くの師や友に触れさせるために組分けは、必要であるという理屈もうなづけます。
この時期になりますと、そう思いながらも複雑な気持ちになります。一年間、手塩にかけてきた生徒、ようやくムード、モラルの良くなりかけた学級集団がばらばらになるのが惜しいという感情と精神的に最も変化の激しい多感な時期に刺激や不安を与えるのではないかという心配がつきまとうのです。思い上がりもはなはだしいと思いながら悩んでしまうのです。
生徒指導は、生徒理解から始まると言われます。そういう意味から、組分け後の二年間を学級づくりに新たな意欲をもやしたいと思います。一人一人の生徒の日常生活を観察していると、どの生徒も理想を持ち、りっぱになりたいと思っています。でぎるなら良い点数を採りたい、部活では優勝もしたい、良い子になりたいと思っているのです。そのためには、どうしたらよいか、努力をすることであるということも知っているのです。ネジが緩んでいる生徒が沢山いるのです。どこのネジが緩んでいるのか、どうして締めたらよいのか、そこを気づかせ助言し、励まして一回一回ネジを締めてやることが必要と思います。親と子と教師が一体となって取り掛からないとなかなかできないものです。それには、どうしても、時間がかかるのです。やっとお互いに理解し合って「がんばるぞ」と思った時に組み分けになってしまうのです。しかし、これは、手前がってなことかもしれません。
新学期を迎えはや二か月、性格検査の結果を検討しながら生徒を観察する今日この頃です。中学二年生というのは、非常にむずかしい時期でもあります。現在は特に心の安らぎが求められる本来の意味での家庭に恵まれていない生徒が多いと思われます。最近の生徒の荒れた行動の原因の一つとも考えられます。学級担任として、学級を経営していく上でこころしていかなければならないと思います。生徒の誰もが安心して生活でき、みんなくつろぐことができる、しかも厳しく自分を鍛え学習に励み合う学級を生徒とともに作って行きたいと思います。
(福島市立北信中学校教諭)
スポーツ大会で