教育福島0082号(1983年(S58)07月)-039page
図書館を10倍うまく使う法
県立図書館司書
大堀高夫
図書館コーナー
私が県立図書館で仕事をするようになったのが去年の四月。いつの間にか一年の月日が過ぎ去ってしまった。長かったようでもあり、短かったようでもある。
私が仕事として図書館を選んだのは図書館が「国民の知る自由を守る根本的機関である」という点に大きな意義を感じたからである。また、図書館行政が抱えている問題点がじつに多いことも興味を深くする要因であった。しかし、この一年間現場で働いてみて私が感じたのは、行政自体の問題もさることながら、利用者の利用の仕方がじつにもったいないということだった。
これからここに述べることは、私がこの一年間感じた「こうすればうまく図書館が使えるのに…」などといったもろもろの図書館のうまい利用法と思われるものの紹介である。これを題して「図書館を十倍うまく使う法」−。
最近、実用書の類の本がよく売れています。その対象も銀行の利用法から旅行術、果ては野球の観戦方法にまで及んできています。
しかし、それらに目を通してみると一様に言っていることはその事柄について深く知れ、ということです。つまり、物事をうまく利用したり、何倍も楽しんだりするには、その対象についてよく知っていることが必要だと言うことです。そしてこれは当然図書館においても言えることなのです。では、図書館とはいったい何ものなのでしょう。少し考えてみてください。
もし、あなたが「図書館とは本を借りて読む所、学生が勉強をする所」と考えているのでしたら、あなたはすでに図書館をうまく使っている人に、大きく差をつけられていることになります。一般に図書館の基本概念は、地域住民に対する資料の提供と資料の需要促進機関であるということです。そしてさらにもう一つ頭におきたいのが、地域情報機関のセンターとしての存在価値です。とにかく、これだけを考えて、今までの古い概念はすべてとりはずしてください。
図書館における本を貸す作業は、重要ではあっても資料の提供における付属的なものですし、予算は社会教育費から出ているものですから、主な対象は学生だけではなく、一般県民と対象が広範囲にわたります。
では、使い方で面白い例を少し述べてみましょう。
例1 よく我々は度忘れをしますが口の先まででかかっていて、なかなか出てこない時のあのいらだちは、あまりいい気分ではありまぜん。個人的なことではどうしようもありませんが、一般的な事ならすぐ図書館に電話すべきです。よくあるのが漢字や人の名前の度忘れなどですが、度忘れに限らず簡単なちょっとしたことでもその場で調べられない時は図書館で調べるのが便利です。
例2 今あなたは外出しています。ある所へ行こうと思うのですがどうもたどりつけません。近くの人に聞いてみても分かりまぜん。
こんな時、知人の家なら電話をかけてすむのですが、住所がわかるのでしたら近くの図書館に電話をして、住宅地図をみてもらう手もあるのです。地図をみて教えてくれますから、その辺で聞くのと違って、わかりやすいのです。
例3 最近、幼ないかわいい声で、「金魚が死にそうなのでどうしたらいいでしょう」という質問の電話がありました。資料をあたったのですが今一つはっきりしません。結局はペットショップから情報を得て解答したのですが、図書館では専門分野などについてはそれぞれの専門機関から情報を得たり専門家を紹介したりもしています。
すでに東京や大阪などでは図書館に協力してくれる機関を集めた類縁機関名簿の作成を始めています。いずれは福島県でも作成しなければならないものだと思います。
その他、友人の誕生日にその日付の新聞のコピーをプレゼントしたり、デートの待ち合わせ場所にしたり、図書館はその人の創意工夫で実に様々な使い方がされているものなのです。
みなさんも図書館をはじめとして様々な公共施設を便利に使ってみてはいかがでしょうか。その目的がその施設にあっているものであれば、その使い方はやがて一般化していくものなのではないでしょうか。