教育福島0083号(1983年(S58)08月)-006page

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はる なつ あき ふゆ

 

劇場より

劇団四季 麦 草平

 

を魅了した。昭和二十三年、京都の生まれ。今後が期待される好漢である。

 

【筆者紹介】 昭和四十七年同志社大学経済学部を卒業。学生時代は合唱団の一員で所属はテナー。また、師匠について本格的に狂言を勉強した。卒業と同時に劇団四季の研究所入り。デビューは一年後の昭和四十八年。中野サンプラザホールで公演されたロック・オペラ「イエス・キリスト=スーパースター」のべテロ役であった。ミュージカルでは、昨年日生劇場で大ヒットL今年一月にも再演された「エビータ」のペロソ役も大好評であった。ストレート・プレイでは、「ユリディス」の死神アンリ、「カッコーの巣をこえて」のチーフ・プロムデソ、「オソディーヌ」の水界の王、「エレファントマン」のトリーブスの各役に好演。今年七月には奇しくも初舞台と同じ、「ジーザス・クライスト=スーパースター」のべテロ役で熱演。日生劇場の観客を魅了した。昭和二十三年、京都の生まれ。今後が期待される好漢である。

 

トランプのカードを互いに立てかけてバランスをとり乍ら上へ上へと積み上げてゆくあそびがあります。お芝居を作る作業というのはこのあそびによく似ています。

お芝居は総合芸術ですから、劇団には様々なジャンルの能力に秀れた様々なタイプの人達が集まっています。明晰な分析力と指導性を持りた演出家、すこしでしゃばりで感性的でおしゃべりな俳優達、美的造型力に秀れた舞台装置家および衣裳デザイナー、信じられないほど繊細な色彩感覚を持つ照明家、どんな音にも極めて敏感な作曲家、音楽監督、素晴しい構成力とリズム感に富んだ振付師、機械を知悉したオペレーター、黙々と手仕事に精出す大道具、小道具さん、衣裳の縫い子さん達。

これだけの人達が同時に仕事をするのですから、各々の主張と主張がぶつかるのは当然で、一方が「このテンポでは踊れない」といえば一方が「このテンポでなければ音楽にならない」とか、「この照かりでは装置が生きない」とか、「この衣装では動けない」とか、しょっちゅうケンカをしています。人が見たらちょっと驚くくらい激しくやりあうこのケンカも、お互いを生かすギリギリの接点を探すための積極的な手続きなのです。

カードのあそびと同じように一方の押しが必要以上に強すぎると共倒れになってしまいますから、このケンカの秘訣は、注意深く相手の主張を聞くことです。作品を完成させる、という全員共通の願いと使命があるかぎり、必ず接点はみつかります。一歩譲ったことによって相手の能力を理解し、影響をうけることもしばしばです。こうした日々を過すにつれ、全員の顔つきが同じになってきます。

 

 

 


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