教育福島0083号(1983年(S58)08月)-009page
各学校では、「人間性豊かな児童生徒の育成」という大きな目標に向かって、地域の実態及び父母や教師の願いをふまえて、具体的な自校の教育目標を設定し、この具現のために日々努力している。
自校の教育目標が、本当に一人一人の児童生徒にとって行動目標化され得るためには、学校経営や学年学級経営をどうすべきかを真剣に考える必要がある。
すなわち、学校経営及び学年・学級経営を、単に管理的な発想からのみとらえるのではなく、教育目標の具現という視点からとらえることが大切であり、このような視点で経営を見直し実践することによって、今日学校がかかえている多くの困難な問題を解決する糸口をつかむことができるものと考える。
(二) 教育目標と学年・学級経営
各学級担任の教育活動は、学校の教育目標を達成するという共通の基盤に立つものでなければならず、いわゆる「学級王国」といわれるように学級担任の懇意に任されるものではない。
すなわち、学校の教育目標を当該学年の児童生徒の発達段階や実態に応じて具体化し、各学級の教育活動の目標に方向づけを与える必要がある。
したがって、学校全体の共通の教育目標をもとにしながら、児童生徒の発達段階と実態に応じて、一つの学年は他の学年とは区別される独自な目標を設定するとともに、教育内容や方法に具体化されなければならない。
ここに、学校の教育目標を学年・学級という組織の目標に具体化、個別化する学年経営が必要となる。
具体的には、学年目標の設定、実施評価というサイクルになろう。
さて、学校の教育目標の達成を目指す学年、学級の経営上、次の点に留意することが大切である。
ア 学年・学級の経営方針を達成するための具体的方法や指針を明確にしておくことが、学年内の各教師の共通理解を深め、実践を推進することになる。
イ 他学年・学級との連携を図ること学校の教育目標は、一学年、一学級の実践のみでは達成されない。
その学校の教育活動全体を通してつくり出される雰囲気、校風が土台になければならない。
この意味で、教師一人一人が、いつも学校全体の立場で考え、協力する姿勢が必要である。
ウ リーダーシップとフォローシップの調和を図ること。
実践過程において、学年主任と学級担任、あるいは係主任と係との間で、管理的機能ではなく、指導助言の機能が有効に働いていることが大切である。
エ 保護者との連携を強めること
学校の教育目標はへ最終的には一人一人の児童生一徒の行動目標(到達目標)として初めて具現するということであれば、学校生活のみならず家庭生活も実践の重要な場となってくる。
このため、単校の教育目標及び学年・学級の目標を保護者にも周知徹底し、共に具現に向かって努力すべきである。
特に、小学校低学年では、一人一人の児童の到達目標を知ってもらい共通の立場で援助指導することによって、より大きな成果を上げることになる。
(三) 学年・学級経営の構想
学年・学級経営は、学校の教育目標の具現を図るための単位であり、計画的、組織的に教育活動をすすめる営みでもある。
この教育活動が成果を上げるためには、新しい基盤に立った経営を考える必要がある。
このため、教育課程基準の改善の基本方針を十分に理解し、経営に生かすように努めることが大切である。
ア 「豊かな人間性の育成」をめざす経営
豊かな人間性の育成を図るための力点として、答申では七つの観点を示している。自校の児童生徒の実態とこの観点を比較検討して、努力すべき点を明確にして、実践することが大切である。
イ 「ゆとりのあるしかも充実した学校生活」をめざす経営
実践の中心となる学級経営において、特に重要視されるべき課題であり、担任教師の創意と工夫が要求されるところである。
授業におけるゆとりと充実は、もちろん大切であるが、これとともに学級生活全般について十分考慮する必要がある。
ウ 「人間関係の確立」をめざす経営
児童生徒は、学級集団の中で、それぞれ目標をもって、助け合いや協力、励まし合いなどの相互交流を通して成長していく。
担任教師は、常に一人一人の児童生徒の理解に努めるとともに、モラールの高い集団づくりに努める必要がある。
(四) 指導態勢の確立
学級・学年経営が、その成果を上げるためには、所属する全教師が、互いに協力し合って経営の実を上げ得る指導態勢の確立が大切である。ア 学年の各担任教師が、その学年の成員である自覚に立って行動すること
このことは、各教師がただ連絡をとりあって進めることだけでなく、共同の責任を負う一体的な結びつきで指導することを意味する。
イ 学年としての授業の計画や生活指導などについて共通理解をもち、学