教育福島0083号(1983年(S58)08月)-016page
(ホ) 話合い活動でなによりも大切なことは、教師が第三者的傍観者的態度に終始するのではなく、自ら学級の問題について、児童生徒と一緒に考え、解決していこうとする姿勢を示すことである。
2 学校や地域社会の特色を生かす学校行事
学校行事の指導計画作成の条件の中で「学校の実態に即すること」や「地域社会の実態や特性を考慮すること」が挙げられている。
1) 学校や地域社会の特色の生かし方
○学校の特色を生かすには、学校の教育目標の具現を図る教育活動の一つとして学校行事を位置っけ、人的物的条件を考え、自校の伝統を生かすよう創意工夫する。
○地域社会の特色を生かすには、学校の所在する地域環境の特性を十分に検討し、学期や季節等も考慮しながら学校行事の内容を工夫する。
2) 学校や地域社会と協力して教育の
効果を上げるためには、学校の教育
について機会あるごとに地域の人々
に理解してもらうよう努めることが大切である。そのため、学芸的行事や体育的行事の中には、地域の人々が参観しやすいような期日を考慮して計画する必要があるものがある。
○学校行事の時数は、一般に年間、三乃至四週の時数程度と考えられる。したがって、学校行事を計画し実施する場合には、学校が主体性をもって精選することが大切である。
3 学校、学級生活への適応指導
児童生徒は、地域社会や学校、学級などの物的、人的環境に個性的に適応していく過程で自己変革と自己実現を図っていくものである。その過程が円滑に進められるように援助し指導する働きかけが適応指導である。
1)適応指導の内容
○学校、学級生活における人間関係の改善に関する指導
○児童生徒に共通する不安、劣等感の解消に関する指導
○学校、学級生活における規則や基本的行動様式に関する指導
2) 適応指導の例
○入学当初における適応指導
新しく小・中学校に入学した児童生徒にとって、学校生活は、物的、人的環境その他、未知の世界に入ることで、すべて新しい経験である。したがって適応指導は、入学当初の学級指導の中心となる。
○日常生活における適応指導
適応指導が効果を上げるためには学級の中に、教師に対する深い愛情と尊敬が、児童生徒相互には友情と協力の精神などがなければならない。そのためには、学級の成員間に連帯感や許容的、共感的態度が生まれるように努め、どの児童生徒も安心して発言できるような雰囲気づくりが大切である。
そして、なによりも大切なことは学級担任教師自らが豊かな人間性を培い、児童生徒への分け隔てのない公平な愛情をもって、健康で明るい態度で平素から、児童生徒に接することである。
六 生徒指導の充実
(一) 生徒指導の意義
生徒指導は、「すべての児童生徒を対象とし、一人一人の人格の価値を尊重し、個性、能力の伸長を図りながら同時に社会的な資質や行動を高めることをめざして行われる教育の機能である」ことに積極的意義がある。
文部省刊行「生徒指導の手引」では生徒指導の意義を、次の角度からとらえている。
1) 生徒指導は、個別的かつ発達的な教育を基礎とするものである。
2) 生徒指導は、一人一人の生徒の人格の価値を尊重し、個性の伸長を図りながら、同時に社会的な資質や行動を高めようとするものである。
3) 生徒指導は、生徒の現実の生活にしながら、具体的、実際的活動として進められるべきである。
4) 生徒指導は、すべての生徒を対象とするものである。
5) 生徒指導は、統合的活動である。これらは、いわば、生徒指導の積極的な面で、生徒の人格あるいは精神的健康をより望ましい方向に推し進めようとする指導である。
しかし、最近社会問題化している児童生徒の非行の多発化と多様化は、避けて通ることのできない生徒指導上の大きな課題となっている。したがってすべての児童生徒を対象とする本来の生徒指導のあり方を十分にふまえながら、非行問題解決のための対応にせまられているのが現状であり、このために学校の教育活動が、非行対策にかなりの力を割かざるを得ないのも実情である。
(二) 生徒指導の充実
生徒指導の充実のためには、各学校において児童生徒一人一人の個人課題と、学級、学年、学校といった集団の課題を明確にし、解決のための具体策を確立し、着実に日常の実践を積み重ねることが大切である。
したがって、生徒指導充実の方策はそれぞれの学校の課題によって異なってくるのは当然であるが、各学校に共通する課題のあるのも事実である。
ここでは、年度初めにあげた指導の重点をいくつか取り上げ、更に具体的な実践の方向について述べてみたい。
1 教師の共通理解と指導体制の確立
生徒指導は、全職員の一致した理解と方針によって、実態に即した指導体