教育福島0083号(1983年(S58)08月)-018page
七 進路指導の充実
(一) 進路指導の目的と性格
進路指導は、職業のあっせんや高校進学のための準備や補習などではなく生徒自らが自己の進路について考え、個性に応じて進路を選択したり、更に将来の生活において職業的自己実現が図られるような能力や態度を育てることを目的としている。
したがって、進路指導の基本的性格として、次のようにおさえることができる。
○進路指導は、生徒自らの生き方についての指導・援助である。
○進路指導は、一人一人の生徒を大切にし、その可能性を伸長する教育活動である。
○進路指導は、学校の教育活動全体を通じて行うべきものであり組織的、計画的、系統的に行われる教育活動である。
○進路指導は、家庭・地域社会・関係諸機関等との連携、協力が特に必要とされる教育活動である。
(二) 進路についての系統的な指導
進路指導は、学級指導の中に位置つけて三年間を見通しての指導を中核にするとともに、学校の教育活動全体を通じて行うべきものである。
したがって各学校においては、三カ年を見通して計画的・継続的な進路指導が行えるよう指導計画を作成する必要がある。
特に、各学年における進路指導の発展・系統を明らかにして、それぞれの学年の指導に当たることが大切である
例えば
○第一学年では、一般に進路についての関心を深めることに重点が置かれようが、進んで自己の進路を計画しようとする態度を養うこともおさえておく必要がある。
○第二学年では一般に進路を明確にしていくことに重点が置かれようが、上級学校や職業などに関する進路情報を理解させ、自己の計画を吟味し
て実現しようとする態度を養うこと
もおさえておく必要がある。
○第三学年では、進路を選択し、決定することが中心となるが、そのために必要な知識が不十分であれば、当然指導しなければならない。
また、第三学年の指導に当たっては、特に情緒の安定を図るよう、適切な配慮をするとともに、進学希望者と就職希望者との相互理解が図られるよう、実態に即した指導が大切である。
このようにみてくると、各学年において意図する指導が行えるようにするためには、前学年までの指導内容を十分考慮し、計画された内容を完全に実施しておくことが必要不可欠のこととなってくる。
なお、生徒が進路の決定をする過程では、人生に対する信頼、進路への希望、そして身近な人びとに対する愛情が自然に学習されるようでなくてはならない。
(三) 進路指導と学級担任
学校における進路指導が適切に行われるためには、特に学級担任教師の熱意と指導力に待つところが多い。
したがって、学級担任教師は、進路指導の重要性とその果たすべき役割を十分理解し、学校の指導計画に基づきながら学級の実態に即して適切な指導計画を作成し、指導法を工夫するなど積極的に生徒の指導に当たることが望まれる。
進路指導における学級担任教師の役割としては、次のようなことが考えられる。
○学級の指導計画の作成と実施
○学級指導における進路に関する指導−進路相談との関連を図る。
○各種資料・情報の収集と提供
○生徒に関する個人的並びに集団的な資料の収集・整理・活用
○進路相談の計画・実施
○保護者との連携及び啓蒙
学級担任教師は、担任する生徒のそれぞれの個性や家庭の事情、本人や保護者の進路希望などをはじめ、それぞれの生徒の進路における自主性の発達状況をたえず確かめながら、その指導に努めていくことが大切である。
次の表は、学校における進路指導について、生徒が希望することを調査した結果であるが、生徒の切実な願いが提起されている。
この調査に表れていることを十分理解して、十分な配慮のもとに指導を進めることが肝要である。
学校での進路指導に望むこと。(2項目選択)
(昭和57年度福島県中学校長会研究集録より対象生徒3年生)