教育福島0083号(1983年(S58)08月)-019page
八 へき地・小規模校の教育の充実
(一) へき地・小規模校の特性を生かす学校・学級経営
へき地の学校並びに小規模校における指導は、基本的には、他の学校と変わるものではない。教育活動が子ども一人一人の能力、個性に応じた成果を上げるためには、子どもの実態を客観的にとらえ、それを総合的に判断して教育課程を策定する必要がある。特にへき地・小規模校にあっては、その特性を明確にして、それを踏まえた上での計画と実践がより大切である。
従来は、へき地小規模校の宿命として、短所面を強調し、補短伸長の教育的努力がなされてきた。今後は、更に一歩進めて短所的要素を逆に特性としてとらえ、これを生かすことを考える伸長補短の考えで教育活動を展開する必要がある。そして、へき地校だからできる、小規模校だからできる教育の創造と実践が望まれる。
1 地域との連携を図る経営
へき地・小規模校はお互いに共通する要素や条件をかかえながらもそれぞれ異なった地域の中に存在している。したがって、地域の実態に即した主体性のある教育活動を展開することが求められる。子どもは豊かな環境の中で、学校の教育力、家庭の教育力、そして地域の教育力で育つ。人間性豊かな児童生徒の育成には、それにふさわしい教育的環境を充実整備する必要がある。地域に豊かな美しい自然があっても、それだけでは十分な教育機能を果たすことはできない。地域にある生きた教材や学習の場を積極的に活用して、教材化することが大切である。更に、学校教育目標に、地域の教育課題や、保護者の願いを取り入れ、同時に学校の教育方針、あるいは学校行事など、学校の考えが地域の人々に理解され、協力支援を得ることが大切である。
2 家庭との連携を図る経営
交通網の整備等により、遠距離ながら通勤が可能となり、家庭生活も大きく変化してきた。学校教育は学庭教育の基盤に立って推進されるものであり人間形成上お互いに補完的な役割がある。そうした意味において、相互に話し合い、目標を確認して、協力することが必要である。教師と父母との人間的に触れ合いの中での話し合いは、へき地小規模校では容易に可能であり、より連携を強化する必要がある。
3 少人数の特性を生かす経営
へき地・小規模校では、一人一人の児童生徒を見つめ育てる教育が可能である。複式授業を通して、自学自習の習慣や異学年との協力活動から、より主体的に学習する態度を育てることができる。これらの長所を生かし、基礎的・基本的事項を確実に身につけ、一人一人の能力や個性を十分配慮した指導が展開できるようにすることが大切である。
4 全教師が機能する経営
へき地・小規模校の場合当然教員数も少ない。その少人数教師一人一人が持つ専門的能力や、特性を最大限に生かしていくことをもっと重視する必要がある。個々の教師が、明確な組織の位置づけと、学校教育目標の具現化方策の共通理解を基にして、学級の教師から学校の教師として学校教育活動に一致して当たる経営が望まれる。
(二) ゆとりある充実した学習指導の展開
学習指導の展開に当たっては、教師と児童生徒との触れ合いの緊密さを生かし、一人一人の能力・適性に応じた指導の実践が望まれる。
1 教科指導
1) 児童生徒の実態を把握し、地域の学習環境や生活経験を生かせる指導計画に改善する。
特に複式学級における年間指導計画の作成に当たっては、同一学級で二種類の指導をすることになって統一が取りにくくなるので、なるべく二個学年が同単元指導(一本案、二本案、完全一本案、折衷案)できるよう工夫する。
2) 学習が意欲的、主体的に進められるよう指導過程を組織し、目標、課題、教材内容、学習方法等が一人一人の学習成立に機能するよう配慮する度要がある。
小人数学級では、一人一人の学習到達度を明らかにして指導する。
3) 生徒指導を具体的に行う場は授業であることを認識して、児童生徒一人一人の能力と個性に応じた授業の.実践に努力する。
4) 複式学級にあっては、直接指導と間接指導との有機的な関連を図り、特に、間接指導における児童生徒同士の話し合いや教科に応じた学習の進め方などの学習方法を訓練して、主体的な学習がなされるようにする
5) 視聴覚教材の利用、教材や資料の自作、機器の活用を積極的に行い、学習の意欲や経験の拡大、授業の効率化が図られるようにする。
2 特別活動の指導
小規模校では、十分な集団活動を組織しにくい悩みはあるが、教育目標の具現化という観点から少人数集団の活動を通し、一人一人の児童生徒が自己の目標に歩み寄る実践的な活動を、実態にそくして計画することが大切である。
3 道徳教育
1) 「一人一人の道徳性、生活の実態が把握しやすい」「月、週の生活目標の個別化が容易」「家庭との連携