教育福島0083号(1983年(S58)08月)-023page
十一 幼稚園教育の充実
(一) 指導計画の再検討
1 指導のねらいを明確にする
一般にねらいは抽象的になりがちである。一年中どこにも当てはまるようなねらいにならないためにも、今日、幼児に、どんなことを身につけさせるかを明確にする必要がある。そうすることによって、経験や活動をどう具体化するのか明確になるとともに、一日、が終わったとき、今日一日で幼児は何を身につけたかという評価を適切に行うことができるのである。
一日のねらいを明確にするには、次の点を明らかにしておく必要がある。
1) 「主なねらい」及び付随して達成される副次的なねらいは何か。
2) 一日の多様な活動で達役されるものか、ある特定の活動によって達成されるものか。
3) このねらいはこの時期でなければ達成できないものか。
4) 日々の活動を繰り返すことによって達成できるものか。
5) 長期的なねらいか、一時的なねらいか。
6) 意欲・態度・習慣を育てるものか知識や理解、技能を育てるものか。
7) 幼児に欠けているものを補うのか潜んでいるものを引き出すのか。
また、ねらいを設定するに当たっては、
○学級の大部分の幼児が無理なく到達できるような程度にする。したがってその程度以上の幼児、あるいは到達できない幼児のいることに留意し、その幼児の個々のねらいを指導上の留意事項に記しておくようにする。
○ねらいそのものが、どういう実態の下に積み重ねられてきたものであるか、そして、将来どのように発展していくのか。
○どのような手順や順序を踏んでねらいを達成させていくのか。などについてとらえておくようにする。
2 幼児の主体的な活動を大切にする
幼稚園の指導は、昨日から今日へと幼児の意識に添って無理なく進められ
「今日は、昨日の続きの○○遊びをしよう」と幼児自身が課題や目標をもって活動にじっくり取り組める指導が大切である。そうした指導を展開するには、経験や活動が、
1) 生活の中で模倣したくなったり、必要に感じたりする時期に合っているか。
2) 幼児の状態に応じて多様な取り組みができるものになっているか。
3) 興味や問題意識‘必要感をもたせることが可能か。
4) 幼児の活動を誘発し、主体的に取り組めるものか。
などの点について検討する必要がある。
(二) 指導のありかた
1 適切な準備をする
日案は一日に視点を当てて計画しているが、実際はきょうからあすへの連続の中の一部分である。したがって、準備はその日の前日、あるいは登園前に行われるものばかりでなく、前々から準備が必要なものもある。また、幼児自身に自分たちで活動する前に準備させたり何日か前に連絡して準備させたりするものもある。そのためには、週の中での見通し、あるいは長期間の見通しが必要になってくる。
教師が準備する際には次の点に留意し、幼児が主体的に活動できるようにすることが大切である。
1) 一日の活動の流れに沿って、幼児の言動への取り組みかたやテンポ、発展の方向などに対する細かい予想をたてて準備する。
2) 昨日の経験を思いおこし、意欲を燃やして活動に取り組むことができるように、また、新しい刺激を受け新たな発想を働かせぜて活動に取り組めるように様々な角度から準備する
3) 安全と情緒の安定が確保できるよう環境の点検をする。4) 幼児の意欲の盛り上がりにタイミングよく材料、用具を出せるようにする。
2 指導に当たっての留意点
幼児は興味のあもむくままに、あるいは狭い経験を基に活動することが多い。また、すぐに退屈したり、停滞したりして、自分の力では切り開くことが難しくなることもある。こうしたときにねらいの達成を目指した活動を展開させるためには、教師の適切な援助が必要である。そういう場合、配慮すべきことは、
1) 内容を教えようとするのではなく幼児の活動を誘発し、体験させるようにする。
2) 幼児の心の動きをとらえ、興味や欲求を満足させるようにする。
3) 幼児が目的や課題をもって取り組むようにする。
4) 幼児の活動に対する共感や承認、励ましを大切にする。
5) 活動の結果より過程を大切にする
6) 活動を友達へ広げて、個人の経験を共通化するように援助する。
7) 活動をねらいに向かって方向づけ経験や活動の性格を十分に生かした展開を図る。
8) 総合的な指導を行い、経験や活動の組織化を図る。
9) 幼児自身でも活動を発展させ、創造的活動を促す。
10) 教師と幼児、幼児同士の心の触れ合いを大切にする。
11) 臨機応変に処置のできる弾力的な指導を行う。
12) 多様な活動が連続して行われる場合は、活動相互の調和と共に関連性を考慮し広めていくようにする。などである。