教育福島0083号(1983年(S58)08月)-034page
グループ研究
篆刻・刻字指導の研究
県北地区書道研究グループ
はじめに
書道の展覧会における「篆刻・刻字」作品は年々その数も増し質も向上してきた。この篆刻・刻字が高等学校芸術科書道の教材として取り上げられるようになってまだ日も浅い。したがってその資料も乏しく、指導者の好みや興味によって取り扱い方や時間数などがまちまちである。
今回のグループによる調査や研究では篆刻・刻字の基本的な制作過程の設定とそれに費やす理想的な時間数を見いだすことにあった。
一 研究方法
高等学校における基本的な制作過程とそれに要する指導時間等を定めるためつぎのような研究方法を考えた。
(一) 蒙刻家や刻字作家の作品制作過程を見学する。
(二) 参考図書や映画などによって、その過程と技術を調査研究する。
(三) 篆刻・刻字に必要かつ十分なる指導過程を設定する。
(四) その指導過程に各々制限時間をつけ、学習指導案を立て、.それに従って指導する。
(五) 生徒の実作業時数を記録させる。
以上のことからつぎの事項を導き出したいと考えた。
1) 配当時間内における可能な制作過程の設定。
2) 種々の制作過程の必要な時間数。
3) 高等学校における標準的な制作指導過程とその時間数。
二 篆刻について
篆刻家の作品制作過程は公開しないでほしいという要望で非常に難しい調査になった。
A氏の場合
文字研究→草稿→印稿→布字→運刀→破辺→補刀→印影
B氏の場合
文字研究→印稿→字入れ→運刀→撃辺・補刀→押印
C氏の場合(中国の寡刻家)
文字研究→布字→運刀→補刀→印影
C氏の方法では布字にその特色があり、印面を処理したあとフェルトペンにて直接左文字にて布字し修正をせず直ちに運刀を行い、仕上りまで七分二〇秒の早わざであった。
D氏の場合
字調べ→印稿→字入れ→運刀→補刀→撃辺→押印
E氏の場合
寡法→章法→刀法→押印
象刻家や文献などから一番ていねいな制作過程を1)のように設定した。
1) 文字研究→草稿→印稿→字入れ→運刀→補刀◆撃辺◆押印
これに対し最少限の過程2)を設定した。
2) 字入れ→運刀→補刀◆撃辺◆押印
この1)と2)の間にはいろいろの過程が考えられ、それぞれの学校(今回は五校の生徒五一〇人を調査研究の対象とした)で配当時間を定めて実践した
例えば2)の過程を一〇〇分と二〇〇分で指導した場合、また、それに文字研究を加えた場合、草稿の過程を加えた場合などがある。
用材は二・五センチメートル角の青田石に統一した。
三 刻字について
刻字については、すでに文部省が高等学校指導者養成講座を開いた際に日本刻字協会がそのために編集した「刻字教本」を基準として制作過程を考えた。
文字研究→草稿→かご字→運刀→作品処理