教育福島0083号(1983年(S58)08月)-039page

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民的資質の形成ということを一貫して学習指導の展開に具体化することであろう。このように、各分野の風通しをよくした趣旨を生かし、分野間の関連を図る上で具体的な方策として考え出されたのが、地歴並行学習いわゆるπ型学習であり、すでに、各学校において実施されているところである。

しかし、授業の実践を見ると、必ずしも趣旨通りのπ型学習が展開されているとはかぎらないようである。その多くは、両分野の断片的な項目結びつけの教材構成だけの学習である。

π型学習のねらいとするところは、上述のように、社会事象を総合的にとらえ、社会科の目標に迫ることであるしたがって、実践に当たっては、社会科の教科構造を踏まえ、π型学習の長所や短所をしっかり認識しながら、新しい社会科の創造という視点から、本う一度自己の実践を振り返る姿勢を六つことである。

両分野の関連や融合は、現実的にけ難しい問題もあろう。しかし、関連や融合があってこそ、生徒の社会認識や公民的資質を練ることができる。関直の指導があってこそ、地・歴・公民の三分野の重複を避け、教材内容の精選も可能になってこよう。

今後は、内容的、能力面から、分野間の接点をとらえた指導計画の確立カ目指して、なによりも小単元単位の望践の積み重ねが優先されるであろう。

 

三 現代社会の指導

 

高等学校学習指導要領の改訂に伴って、昭和五十七年度から社会科に「現代社会」が新設された。高等学校社会科で、唯一の必須科目であるこの科目を通して、「中学校までの学習の成果を生かし、より広い視野から、これまでに学んできたそれぞれの内容を、社会や人間に関する基礎的な問題としてとらえ直し、より深く考えるような発展的な指導をしていくこと」が期待されている。

この新設科目誕生の背景として、高等学校への進学率の上昇に伴う、高校生の能力、適性や興味・関心などの多様化があげられている。更に、これまで知識中心の指導にともすれば陥りがちであった社会科教育、生徒の立場に立つことなく、教師の論理によって進められてきた社会科教育に対する反省もある。

その意味で、「現代社会」を指導する教師には、多様化している一人一人の生徒の実態を的確にとらえ、それに応じた望ましい学習指導ができるように、これまでの指導のあり方を、根本的に見直すことの必要性が特に求められているのである。「高等学校学習指導要領解説社会科編」に述べられている次の諸点

「(一)指導内容を平易にするとともに指導事項を徹底して精選し、生徒の思考力や判断力を育てること、(二)学習する生徒の立場に立って、指導内容の構成やその取扱いなどについて積極的に工夫することができるような科目にすること、(三)学習すべき一定の知識があり、それを理解させ、身につけさせるという考えに立つのでなく、生徒が今後の人生を生きて行く上で、自ら考え判断し、自分自身の人生と社会生活を充実したものにできる力を育てること(四)そのために必要な社会と人間に関する基本的な問題について学ばせようとすること」に注目したい。

当教育センターの高等学校社会講座も、学習指導要領の改訂の趣旨を生かした講座とするため、これまでの講義中心から演習を中心とした実践的な講座へと、内容の変換を進めている。

 

おわりに

 

新しい社会科では、急激な社会情勢の変化に対応できる人間の育成がなによりも要求されてくるであろう。したがって、これに対処し、児童生徒の社会認識や公民的資質が正しく育つように、望ましい指導法を追求し、構築しなければならない。

この小文に掲げた各学校段階の課題は、当教育センター社会講座の研修者の多くの指導上の悩みであった。これらを一つ一つ取りのぞき、じぐざぐと難行を重ねながら新しい社会科を目指して、前へ進むところに問題の解決もあろう。

 

▽本県における合科的な指導の取り組み(上)と指導計画の作成状況(下)

福島県小学校長会「教育過程特別委員会報告書」より

福島県小学校長会「教育過程特別委員会報告書」より

 

 

 


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