教育福島0083号(1983年(S58)08月)-046page
ます浪江地区保護委員会の一メンバーでもあります。今日はこれら二つの立場から高校生の校外での補導の問題につきまして、その実際の状況と日頃考えておりますことを申しあげたいと思います。
どこのPTAでも、校外の補導はPTA本来の重要な活動の一つとして真剣に取り組んでいるものであります。また、保護委員会というのは、もともと子どもたちの校外生活の中全保護を願って、ある被害事件をきっかけにつくられた親自身の組織であると聞いております。いずれにしても、これらは学校や関係団体と連携を取り合い、協力し合って親自らの力で学校外での子どもたちの事故や非行を防ぎ、有害環境の浄化に努め、健やかな育成を図ろうとするものであることは今さら申しあげるまでもありません。
ところで近年高校への進学率はますます高まり、高校生の実態も一層多様なものになって来ております。どこの高校でも共通のようですが、先生方の悩みとして私ども父兄に訴えられることのおおかたは、服装、頭髪の乱れとか、言語態度が無作法であるとか、喫煙が常習的に行われるようになったとか、つまり日常のきまりきった生活習慣がしっかり身についていないということと、交通安全のことであります。このような問題は勿論我々家庭における躾段階での基本的な事柄ではあります。またどこの学校でも生徒指導の最重点目標として取りあげられているものでもありますが、家庭と学校を離れた生活場面でも優先して取りあげられなければならない緊急重要な問題でもあります。
私どものPTAには、常磐線に沿って九つの方部委員会がありますが、この組織が中心になって毎年夏休み中に各方部ごとの懇談会を開催しております。ここでは、その地域の父兄が共通にかかえている生活指導上の問題について、具体的に本音の話し合いがなされます。前の常習化している喫煙の防止等についても通学途中の列車内での指導をどうするか、情報の交換や積極的な提言がなされ対策が検討されるわけであります。
また、高校生のバイクによる事故、違反、暴走行為は昭和五十年代初め頃から全国的に多発し、大きな社会問題となっておりますが、本校でも例外ではありませんでした。昭和五十四年には遂にその状況が極度に悪化し、連日のように特別指導をうける生徒が出るという有様で非常事態となりました。そこで「四プラス一ない運動」を親の立場から自主的におし進めるための組織として「相農PTA交通安全教育推進協議会」を県の提唱に一年先がけて昭和五十五年十二月に発足させました。この組織の大きな特色は、交通モニター制を取り入れた点にあります。モニターとして選任された父兄は約百名おりますが、それぞれの居住地での日常生活の中で随時交通事故、違反防止の直接的な活動に当たると共に、その情報を学校に提供し、さらには他の父兄への啓発活動をも任務としております。この組織による校外活動の効果は極めて大きなものがあると考えております。事故、違反の最も多かった五十四年度にくらべますと五十七年度はわずかに六パーセントにまで激減し、事故は一件もありません。人命尊重の理念のもとに子どもたちの交通安全に対する意識をここまで高めることのできたことは、地道ではありますが、このような親自身の組織的計画的な校外活動の取り組みの成果であろうと考えております。
次に、通学範囲の広さについてですが、私ども浪江地区からは八百名をこえる生徒が相双の九つの高校に通学しております。それぞれの高校ごとに選出された親たち四十二名が相双高校保護委員会長から委嘱をうける形で、地区保護委員会を組織し、相双地区高校PTA連合会や、相双地区高校生活指導協議会とも連携し、保護委員相互の連絡、協調を図りながら、各家庭の協力を得て居住区生徒の保護活動に当たっております。
私どもの地区で例年行っております主な活動は、1)海水浴場の巡視補導、2)町内盆おどり補導、3)土地の伝統行事である十日市の補導、4)冬休み、春休み中の街頭補導等であります。なお各地区共通の活動といたしましては、高校生にパーマをかけさせない運動として、理容、美容組合への協力依頼とチラシの配布や禁煙列車運行の拡大および通学列車の電車化促進について当局への陣情活動等も実施しております。さらに本年度は保護委員会の全組織をあげて強力な列車補導を展開しようとこの間の総会で決定したところであります。
以上親の立場から子どもたちの校外における生活指導の取り組みの状況について、いろいろ申しあげましたが、なかなか容易でない困難な状況がまだまだあり、解決すべき課題は山積しております。
やはり何といいましても、子どもたちの非行防止と健全育成のためには各家庭の親の自覚こそが一番大切なことではないかと痛感している次第であります。非行誘発の原因の一端はたしかに子どもたちをとりまく環境の側にもあります。そしてその浄化のためには我々大人全体が共同の責任として当然最大の努力をしなければならないことは勿論であります。しかし、それ以上に子ども自身の内面に非行抑えることのできるような「がまんをする心」とか「自律心」というものを育てる親の努力こそが大事なことではないかと考えます。そのためには、高校生程にもなってからあわてるのではなしに、幼児期からの家庭での養育や膜が最も大切なことではないかと私自身の体験からも強く感じている次第であります。