教育福島0084号(1983年(S58)09月)-022page

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随想

絵本を愉しむ

 

渡部 典子

 

渡部 典子

 

人と待ち合わせる時、私はよく本屋を利用します。汽車の時間待ちや、思いがけなく用事が早く済んだ時など、とにかく時間を持て余すような時は、本屋に居すわります。長い時間いても退屈しない。本屋は大変便利な待ち合わせ場所だと思います。

本屋で私は、好きな推理作家の新刊をさがしたり、手芸の本を見たり、週刊誌やマンガの本を読んだりします。そして、最後には、子供の本のコーナーに足を止めます。

小さい子を連れたお母さんや、小学生の子供たちが、たくさん本を見ている中に、私もはいっていきます。

おもしろそうな題名の本や、難しい本、図鑑や折り紙の本など、たくさんの本の中で、私の手が自然に伸びるのは、絵本です。大きさや形もいろいろ色もさまざまな多種多様の絵本が並ぶ本棚を、私の手は、行ったり来たり。そして、絵本を開く時、私の胸は、ワクワクします。

日本の絵本に比べて、外国の絵本は色がとてもきれいです。見返しに、赤や、鮮やかなグリーンが一面に塗られていたりして、開いた瞬間、目をみはります。それは、どぎつい原色とは、全く異質の、それでいてはっきりとした素晴らしい色です。中の絵も、このような素晴らしい色で彩られた絵本はことばなんかなくても、作者の心が、そのまま伝わってくる、そんな気がします。

 

ステキな絵本に出会った時、私は他の人にも、ぜひ見せてあげたいと思います。私は、現在、田島町の公民館内にある、図書室に勤めています。すぐ近くに小学校があるため、図書室の利用者のほとんどが小学生です。ですから、私がおもしろいと感じた本は、すぐ、小学生に勧めてみます。でも、なかなかその本に飛び付いてはくれません。

「おねえさん、何か、おもしろい本なーい?」

「おもしろいのって、どんな本がいいかな」

「何でもいいよ」

そこで私は「この間読んだ、あの絵本は絵もきれいだし、話もおもしろい」と思い、

「これどう、おもしろかったよ」

「ふーん、でも、これ、字が小さいし薄いよ」

一般に、絵本の方が、字も小さく、厚さもありません。それでも私は、

「難しい字は、振り仮名がついてるし○○ちゃんには、ちゃんと読めると思うよ。読み始めたら、絶対おもしろいんだから」と勧めます。

「でも、お母さんが、小さい字は、目に悪いって言うし、絵本じゃなく、長い、字の多い本にしなさいって、言うの」

これには、私も困ってしまいます。

反対に、私の勧めた本が、その子に気に入ってもらえて、借りていったりすると、私は無性にうれしくなってきます。自分の覚えた感動が、他の人にも伝わって、喜んでもえる。この本選んで良かったと思います。

 

多くのお母さんの中には、「絵本は小さい子の本」と、思っている方も、少なくないと思います。もちろん、小さい子にとって、絵本は、とっても楽しいものですが、小さい子供だけでなく大人が楽しめる絵本もたくさんあります。

最近は、特に淡い配色の本や、イラスト風の本など、いろいろあるので、絵本の好きな私などは、思わず買ってしまいます。私の部屋の書棚にはこういう絵本が、他の小説の本に負けないくらい大きな顔で並んでいます。子供のころ買った絵本は、ほとんどなく、大人になって、自分で集めたものばかりです。

職場で、絵本に囲まれ、家に帰っても、好きな絵本の中にいて、毎日絵本を愉しんでいます。これからも、また暇を見つけては、本屋へ行き、絵本のコーナーをウロウロする日が続くでしょう。

(田島町中央公民館読書指導員)

 

 

 


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