教育福島0084号(1983年(S58)09月)-026page

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グループ研究

低学力者の学校生活への適応促進

福島県立南会津高等学校

 

本校は全教科にわたって学力の格差が非常に大きい。学力の高い生徒がい

る反面、基礎学力の乏しい生徒も少なくない。低学力者のほとんどが従順で他の生徒に迷惑をかけることもない。消極的という嫌いが、あるにしても、一見学校生活に適応しているかに見える。しかし、一年から二年に、そして三年へと進むにつれて、授業についてゆけず、学習意欲を失い、無気力になったり、非行に逃避したりする可能性がないわけではない。このため十三名の研究グループで一年生を対象にこの

一年間、低学力者の学校生活への適応を促すための共同研究・実践を行ってきた。その一部を簡単に紹介する。

 

一 低学力者の抽出と指導方針

 

入試成績と一学期の成績を基に、体育、音楽等の面からも討議し、成績下位者を二十名、比較検討のため成績上位者二十一名、成績中位者五十八名を抽出した。

生徒が充実した学校生活を送るために次のような共通理解のもとに各分野で研究を進めた。

(一) 教科指導面 生徒の学力の実態を的確に把握し、学習指導を通して、学校生活への適応を促す。

(二)特別活動面 参加意欲を高め、充実した主体的な活動をさせることにより学校生活への適応を促す。

(三) 生徒指導面 全体的に基本的集団生活の向上を図り、不適応者に対しては適切な指導、援助をする。

 

二 教科指導

 

(一) 国語科 全体に基礎学力が不足しているにもかかわらず、生徒はその認識ができていなかった。このため、基礎学力不足を認識させ、ア)授業における発問の工夫、イ)ノート作りによる自己学習、ウ)百字作文、等を試みた。発問について、低学力者は当初なぜ語句の意味ばかり指名されるのか疑問を抱いたようだが、しだいにその意図がわかり、下調べや発問に積極性がでてきた。百字作文は感想文や段落の要点、報告文などをテーマに課した。指導が進むにつれて、生徒に抵抗感が少なくなり、漢字力、表現力が増し、二百字三百字作文へと発展してきている。

(二) 社会科 「現代社会」の大切さを生徒は認識できていた。しかし、学習意欲となると低かった。このため、ア)単元のはじめにおける動機づけ、イ)発問の工夫、ウ)低学力者の課外時の個別指導等に力を入れた。動機づけの一つとして、授業の事前準備のために家庭学習を課し、放課後指導を加え、授業に取り入れた。生徒がそうした内容に興味、関心を持つようになり、家庭学習にも意欲を示すようになった。国語科の百字作文指導の効果の波及もあって、低学力者の家庭学習課題が授業に取り入れられる件数も増してきた。当該生徒に成就感が生まれ、周りの生徒の驚きが全体の学習意欲を醸し出している。

(三) 数学科 生徒の苦手な教科の一つであり、基礎学力が大変に低かった。このため、ア)数学の学力の診断、イ)形成的評価、ウ)総合評価、等を視点に指導法の工夫を図った。中学数学を数学−と関連させて整理し、診断テストを実施し、生徒がつまずいている箇所を認識させた。そして、生徒が充実感を得られるように、習熟度別形成問題を作成し、指導した。総合評価にあたっては習熟度に応じて三段階の課題を設け、伸長度と参加意欲を全体の一割として評価した。こうした結果、低学力者に赤点(三十点未満)が少なくなった。赤点の生徒には基本的到達目標を手直しし、放課後等の個別指導により学力の定着を図り、学習意欲の喚起を促している。

(四) 理科 学力差に大きな幅があるが自己の意識のもとに学習に取り組ませ学習の自覚と意欲を高めることにしたこのため、ア)定期試験に自由研究テーマの成果を加味した評価、イ)授業内容に基づく課題学習とそれに並行した個別指導を柱に、わかる授業をめざしたウ)は定期試験問題を一般問題と自由研究問題に分け、その配点比を生徒がある程度決定できるようにした。回を追うごとに定期考査の評価点が向上し、各人が学習の成果に充実感を得られるようになってきている。イ)については二時限毎に課題(家庭)学習を、約五時限毎に集約学習を指導している。定期試験で三十五点以下の生徒には放課後、個別指導を続けた。低学力者の学

 

 

 


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