教育福島0084号(1983年(S58)09月)-027page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

習に対する適応だけでなく、クラス全体の意欲が喚起され、各人に応じた学力の向上がみられる。

(五) 体育科 一学年の八十四%が体育が好きと答えているが、更に参加意欲を高めるために、ア)指導法の工夫、イ)評価の観点の明確化、等の改善を試みた。サッカーの単元を例に挙げると、フォーメーションの指導前と指導後では、「楽しい」が十七%から六十四%「楽しくない」が三十一%から〇%という結果が出た。またオフサイドルールを学習してから「以前より楽しい」が四十四%になった。生徒が何を要求されているかを理解させる指導により積極的な意欲を示すようになった。評価については、個人技能、集団技能の両面からの観点を生徒に明示することによって、自主性、協力性が以前より増している。低学力者の中からリーダーも現われている。

(六) 音楽科 音楽が嫌いという理由に「歌うのが下手」「人前で歌うのが恥ずかしい」が多かった。このため、ア)歌唱能力が身についていない生徒、音楽に不安を持つ生徒の指導、イ)学習意欲を欠いている生徒の指導、ウ)評価の仕方、等を中心に研究、実践した。歌唱力については失敗の指摘ではなく、優れた点を認める配慮をし、ハンドサインを用いたり、初めは全体で、次にグループで、そして二人で、一人でというように段階を踏まえ、歌唱力の伸長を図り、不安の解消にあたった。またグループ学習を計画し、郷土芸能「早乙女踊り」を取り入れるなどして、意欲を欠いている生徒の自己表現の場の設定をした。評価については向上心や努力、態度等の重要性を生徒に理解させ、学習目標を失わないようにしている。

(七) 英語科 生徒の四十七%が苦手としている教科である。このため、ア)フローチャートの指導案により、フィードバックの重視、(イ)個別指導の強化、ウ)総合評価の工夫等を試みた。音声面からの学習に力を入れ、学習内容を精選し、進度にあまりこだわらず、わかりやすい授業を心がけた。低学力者の基礎学力の定着は授業内だけでは不充分で、放課後、夏季、冬季に個別指導を施した。強制感からではなく、学力の自己認識という点から自主的に参加する生徒も現れた。評価については、平常点(授業態度、伸長度、出席率)を一割として総合評価の中に組み入れることを生徒に周知させた。こうした結果、生徒は学習の方向性および意欲の向け方を体得してきている。

 

三 特別活動

 

(一) ホームルーム HR運営の手引きを作成し、クラスのHR運営委員にHR運営の指導を施した。その結果前年度に較べ年間を通しての見通しを持つようになり、散発的なテーマが減ってより自主的な運営がなされた。今後も更に運営委員の活動を充実させることが課題である。

(二) 部活動 生徒会活動の中でも、とりわけ部活動が盛んで、大規模校に劣らない成績を残している。全員加入制が個人のみならず生徒全体の学校生活の向上に大きく貢献している。

(三) 集団宿泊研修 学校行事の一つとして一年生を対象に、八月に国立磐梯青年の家で三泊四日の日程で集団宿泊研修を実施した。規律正しい生活、集団生活への適応を主なねらいとした。充分な事前指導により研修の成果が著しく、生徒の自主性、協力性、社会性など子想以上に育成された。全生徒が「よかった。有意義であった」と感想をのべている。この体験を今後の高校生活に活かすのが課題である。

 

四 生徒指導

 

(一) 基本的生活習慣と規律 生活面や精神面での乱れが服装や言動に現れて他の生徒にも悪彰響を及ぼし、発展すれば集団全体が易きに流れる可能性さえある。全体に対しての指導の強化が必要である。このような共通理解を持って前年度の指導にいくつか改善を加えた。服装指導は月に一回の割合で行っている。なかなか直らない場合、本下にその非を自覚させ、自らの言動に責任を持たせるという方針をとり、直す期日を許容期限内で本人が決め、誓約書を提出させた。誓約事項が守られなかった場合は父兄連絡、召喚となる。実施してみたところ、誓約書に従い直しはじめている。遅刻、早退等の防止については届出のカードがあり徹底しつつある。清掃面においては先生の監督指導に足並みが揃い、週番の巡視、忠告活動もなされているが、清掃の意義についての意識面での深化、および生徒会の積極的な取り組みが求められている。

(二) 教育相談 本校は教員の平均年齢が三十一歳と若いことや地域性もあって生徒と先生の交流は厚い。いたるところで教育相談的なものが行われているといえる。しかし、消極的な生徒もいる。今年度は常設の教育相談に加えて、五月と九月に面接旬間を設け、HRTによる系統だった面接を実施したHRT、学年による面接回数を加えると生徒一人当たり少なくて四〜五回実施した。その結果、内向的で消極的な生徒も親しみを持って自分から話しかける場面が見られるようになった。

まとめと今後の課題

各領域から学校生活に適応させる研究、実践をしてきたが、教科指導に関しては、指導および評価の改善、個別指導等によって低学力者が意欲を示すようになった。特別活動に関しては前年度の反省に改善を加え一歩前進したさらに内容の充実を図りたい。生徒指導に関しては効果が上がっている。規律とそれを守らなければならない理由を生徒に徹底させ、共通理解のもとに共同実践をより深めたい。地域社会との連携もより密にしたい。成果を焦ることなく、今後も、一人一人の生徒を尊重し、研究活動を更に推進していきたい。 (教諭 古籟 怐)

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。