教育福島0085号(1983年(S58)10月)-016page
高等学校
国語
入門期の「国語1)」の指導
=実業高校の実態を踏まえて=
福島県立二本松工業高等学校
教諭 押田稔
本校の国語の学力差は、年毎にはなはだしくなってきている。特に、授業を通して「読み」、「書き」の力の低下が実感される。三年の担任教師からは「国語の力をもっとつけて欲しい」という要望も出されている。
ところで、昭和五十七年度から国語の履修単位が一単位減になった。旧課程では計九単位であったのが、新課程では国語1)・国語2)で計八単位となり指導の外的条件が少しきびしくなったといえる。
このようだ条件のもとで、本校では昭和五十七年度から中.高連携をテーマとする生徒指導の研究指定をうけたこととあいまって、生徒指導の側面からも国語の力を養成する方策を考える機会に恵まれたのである。
以下は、実業高校である本校の生徒の実態を踏まえた入門期の「国語1」の指導についての、考察と実践例である。
指導の観点は、おおむね、次の三点に絞ることができる。
一 生徒の実態把握
生徒の読解力・表現力の実態はもちろんのこと、読書実態、生活全般にわたる実態、を把握しておく必要がある
昭和五十七年度(本校生及び隣接の高校生を調査対象とした)アンケート調査において「興味の対象」「読書実態」「授業がわからなくなった時期と理由」等が明らかにされた。
工業高校生として生徒が学校に期待するものは、自分の専攻する科に関するものである。また、各種の資格試験に対してである。しかし、いわゆる基礎教科たる国語に対して「あまり興味がない」と冷たく、つき放しがちであるのは問題である。生徒の、このような考え方を修正していくには、大変な苦労を必要とするのである。
次に、これは本校生に限らないと思うが、生徒の貧弱な読書実態についてである。月に、書籍を全く読まない者が、全体の半数近くを占める。雑誌類ではマンガ、週刊誌がすべてである。漢字に対する“抵抗感”をなかなか除去できないのも当然である。
学習時間の調査では、家庭学習をしない生徒が多いのがわかる。カラの鞄を持って登校する生徒が少なくない現状を反映している。(資料1))
(資料1))
1)国語の授業は中学時代と比べてどうか。
やさしい7% ふつう64% 難しい29%
2) 国語が好き(あるいは嫌い)になった時期はいっか。
【好き】
小学校39% 中学校一年19% 中学校二年16%中学校三年15% 高校一年11%
【嫌い】
小学校33% 中学校一年15% 中学校二年20% 中学校三年14% 高校一年18%
3) 学校に期待するものはなにか。
勉強の指導7% 生活規律の指導7% 部活動の指導8% 人間性を高める指導30% 資格取得の指導37% その他11%
4) 二か月に読む本の冊数
0冊47% 一冊20% 二冊15% 三冊62 四冊5% 五冊以上7%
5) 予習・復習をどうしているか。
予習・復習ともにする3% 予習をする4% 復習をする11% 予習・復習以外の勉強をする29% 勉強はしない56%
二 学習指導の工夫
学習レディネスや学習意欲がともなわず、授業内容の理解が容易でない生徒を、授業に導入し、啓発するために次のような試みを行っている。
(一) 「学習の手引き」の活用
「学習の手引き」によって、四月・五月の段階では、「ノートの使い方」「辞書のひき方」「資料の活用の仕方」「図書室の利用法」「予習・復習の仕方」など、具体的に詳細に指導する。「高校生なのだから、この程度のことは知っているはずだ」といってうっかり手を抜くことなど許されないのが現実である。
(二) 作業的学習の導入
あきやすく、緊張感の持続が困難な生徒の指導のための工夫である。教材の文章を音読させる(個人、一斉ともに)、文章の原稿用紙への転写、文章の要約、範読・指名読・朗読をよく聞く、OHP等の視聴覚機器を使ってのイメージ化、を指導の眼目とする。さらに、辞書を徹底的にひかせて、確実さを獲得する。このように、身体全体を駆使しての学習事項の効果的定着を図るようにする。
(三) 授業形態のくふう
授業が単調に流れやすい講義一辺倒を改善し、グループ学習を導入する。そこで文章を斉読させる。また、朗読を、大きな声で行わせる。グループ学習は、これまで、説明文教材の読解のための段落設定や内容要約の学習において効果があった。また、小説教材では、登場人物の心情を自らの生活体験に結び付けて追体験をはかる場合にも