教育福島0085号(1983年(S58)10月)-018page
さらにつけ加えれば、「平泉」のくだりでは、杜甫の「春望」を配するという比較学習、高村 光太郎の「レモン哀歌」では、文学散歩までも織り込む地域性との関連を重視した比較学習、という具合いに、学習事項の効果的な定着のために、積極的な意図を持つものと、とらえるべきである。
次に、これまで述べたことを踏まえて、六月に実施した「国語1)」の授業案を示す。(資料2)
授業は、フィードバックをはかりながら、日本人に親しまれてきた七言絶句の漢詩を味わうことができるよう配慮しながら、、進めた。辞書と地図を活用し、関連するテープを聞かせて、授業展開に変化を持たせた。書き下し文を正しく書かせた。難解語の「客舎」「故人」は辞書で意味を調べさせ、反対語や類義語もあわせ調べさせた。語感をつかむために必要な作業である。このようにして「送元二使安西」の詩にうたわれた情景−緑あざやかな柳、西域へ旅立つ友人への惜別の情を一献の盃に托し、渭水はただ滑滑と流れ続ける−をイメージさせようとしたのであった。
生徒はかなりの興味を示して学習に取り組んでいた。
今回の学習を通して、さらに多くの漢詩を読んでみたいという「意欲」をひき出すことができたものと評価している。
理科
教材構成の系統化と生徒の学習到達度の関連を重視した授業の実践
福島県立安積高等学校
教諭 松宮輝明
一 「魅力ある授業」への取り組み
我々教師が毎時間の授業をする中で生徒が当然わかっていると思われる事項について質問してみると、全く理解されていないことや、理解の度合の不確実なことが多多ある。そのため、第一点としては、常に「生徒の学習到達度がどのようになっているか」を的確に把握しなければならない。
第二点としては、「教材の構成を系統化」することに留意している。新教育課程実施後二年目を迎え、選択理科
(化学)が、履修されている。中学理科、高校理科1)の上にたつ選択化学の教材を既習の教科・科目と関連させ、どのように有機的に編成するかが学習効果の上で大きなポイントを握ると思う。
一方、「家庭生活と進路」についてのアンケート調査を検討すると、本校入学後の学力不振から学習意欲をなくし、無気力になってゆく生徒の多いことがわかった。
教師の努力により、魅力ある授業、充実した学校生活にするために、問題傾向をもつ生徒に対しては、随時情報を収集しながら、細かい観察と接触を心がけ、愛情にもとづく理解につとめわかる授業の実践、すなわち生徒の身になって考える学習指導法の研究が必要になってくる。(資料1)
資料1 「学習と進路について」の実態調査
二 「学習理解度調査」から見た学習到達度
(一) 小単元ごとの目標到達の確認
毎時間の授業の中で「評価問題(標準テスト)」を課し、学習内容の定着を図る一方、「目標到達度調査」によって生徒自らが学習目標への到達度を確認し、つまづきを発見、自らの弱点を以後の学習において克服できるように配慮している。調査は、授業の終わりに一回、テスト前など各自が復習した後に一回記入するようにした。
学習目標に対する自己評価の結果を生徒はどのように活用しているかは次のアンケート結果を参照されたい。
1) 大いに活用した。 二五%
2) まあまあ活用した。 六二%
3) あまり活用しなかった。 一三%
となり、八七%が活用したことになる。(資料2)
(二) 学習理解度調査(資料3)
学習理解度調査は、A類型(文系)B類型(理系)の前年度との比較であるが、学習到達度を細かくチェックすることにより、生徒の理解の度合も大きく向上していることがわかる。
三 モル概念指導のための教材の系統化
高校の化学を学ぶうえで最も基本になる概念は、物質量としてのモルの取り扱いであろう。そして最初に化学嫌いが起こるのも種々のモルの取り扱いによる混乱からである。それまでの原子の構造や結合などについては、初歩的な立場からモデルなどを使用して教えるだけでも生徒の理解が容易なところである。しかし、化学で最も大切な物質量である「モル」と、原子量や分子量、アボガドロ定数などの総合的な関係になると、相互の関係が複雑になりはっきりと理解ができなくなってくる。そこで、できるだけ多くの例をあ