教育福島0085号(1983年(S58)10月)-031page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

◇精神薄弱特殊学級での指導

精神薄弱特殊学級での学習の基本は生活中心ということができる。

将来の社会生活にとって必要なことがらを考慮して学習をすすめることが大切であり、このことは、現在の社会を固定的に考え、社会の鋳型にはめこむといった狭い意味にとらえずに、絶えず発展しつつある社会の変化を見通し、その社会の中で一人の社会人として、豊かな人間性活を営むことができるようにという観点を十分に考慮して指導内容を取捨選択することが必要である。

◇精神薄弱児と抽象能力

精神薄弱児の指導においては、精神薄弱児の心理的特性と学級内での個人差の二つを特に考慮しなければならない。精神薄弱児の最も大きな心理的特性は抽象能力の未発達である。

健常児にあっては、五、六歳を境に抽象能力は急速に発達する。

幼稚園においては、まだ、教科のわくで学習するのではなく、自然な生活指導の姿で具体的な経験や活動を通してねらいを達成する。これに対し、小学校以後において、教科・領域にわくづけし、系統的、体系的な学習指導が行われるのは、前述のような抽象能力の発達が基礎にあるからである。

この点からみると、特殊学級における指導は幼稚園での指導と共通する面をもっているといえる。

モンテッソリーが、精神薄弱児の指導を通して発展させた特別の指導法を幼児教育の分野で応用させたのも、このような共通性があるからである。

また、精神薄弱特殊学級では個人差が大きく、同一教材による一斉指導の指導方法では指導効果があがらず、一人ひとりの異った能力に応じた指導を徹底して行なおうとすると、個別に配慮された指導が重視される。

しかし、個別に配慮するとは、教師と児童・生徒が一対一で個々の課題を与えて常に指導するということではなく、学習の効果をあげる指導法の工夫や、集団活動の意義も重視して学習を展開し、個人差は大きいが、どのようにして一つのまとまった集団として活動をするかについて絶えず特別な工夫が必要である。

◇養護・訓練の取り扱い

盲学校、聾学校及び養護学校学習指導要領に示されている養護・訓練の四つの指導内容

(イ)心身の適応(ロ)感覚機能の向上(ハ)運動機能の向上(ニ)意思の伝達障害の改善克服は、特殊学級においては軽度の障害を対象としているので養護・訓練の時間を特設するよりは、日常の各種の学習活動の中で、養護・訓練の趣旨にそって配慮された指導が行われている。

これら特殊学級での指導は、小・中学校の一学級であるから、学校全体の運営の中に正しく位置つけ、普通学級との交流など、全教職員の共通理解に立つ指導が必要なのである。

 

特殊学級の学習指導

 

(小学校、教科別指導を中心に)

 

会津高田町立高田小学校

 

教諭 岩渕武雄

 

一 教科別の指導

 

教科別の指導は、教科学習、教材単元、教材学習等の別名がある。

教科別の指導では関連、系統、ドリルの三つの面を含んでおり、その三つの類型を示すと、

(一) 生活単元学習の一部ないし関連した類型

「たんざく型」「のれん型」との表現も使われるが、この型は生活単元学習として自主的な生活に必要な事柄を実際的、総合的に学習をする間に、枝葉の「たんざく」のように国語や算数など教科の指導を展開して行く方法で例えば「秋の遠足」という生活単元学習の中で、時計の見方・読み方等の指導をしていては生活単元学習本来の学習が停滞するので、教科の算数の時間に、時計の見方、社会の時間(本校では生活科と呼んでいる)に地図の見方等を系統的に学習する。

この類型では、学習に系統性がうすれやすいので指導計画作成の段階で特に系統性をもたせるよう工夫した上で学習指導を展開することが大切である

(二) 教科別の内容を系統化した類型

健常児の教育にみられるように、系統性を重視した内容を、時間をかけてていねいに教えることを意味しており十数年前に来日したこともあるカーク博士によるプログラム学習理論がこの教育に影響し、教材を分析し、系統化し、一歩一歩学習を進めることを重要視する考え方である。

近年、教材の系統化とあわせて、精神薄弱児の生活の系統化を考える方向に進みつつあると考えられる。精神薄弱児の教育においては、生活から出発し、生活に帰る教育内容、方法が効果があるので、その点から、指導内容の精選と指導の適時性が重要な課題となっている。

(三) 個々の能力に応じてドリルをする類型

いわゆるドリル学習で、二つに分類することができる。ひとつは、生活訓練や日常生活の指導をも含めた“生活のドリル”でありもうひとつは、普通教育のドリルである。一般的には、計算練習や漢字の練習が中心となり、精神薄弱教育においては問題点が多い。

児童は、読み、書き、計算にもっとも個人差があらわれ、それに応じて反復学習をして行くことは効果がある。しかし、ドリル学習は、機械的になりやすく、興味や関心、応用する能力の育成には問題がある。

 

二 本校特殊学級の児童

 

本校特殊学級の児童は、二年生三名

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。