教育福島0085号(1983年(S58)10月)-034page

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育成することができると考え、次のような題材を取り上げている。

◇一学期

・栽培(花壇、鉢物、花と野菜)

・印刷(市内小・中学校用封筒、賞状の印刷など約五万枚)

・雑布製作(運針、ミシン縫い)

◇二学期

・栽培(菊、球根類管理、冬囲い)

・小ぼうき製作(古ほうきの再生)

・印刷(年賀状の印刷)

・造花製作(小・中学校卒業式用バラの花記章、約五千個製作)

◇三学期

・造花製作(二学期より続けて)

◇その他

年度により木工(短冊かけ)、紙ヒモ加工(茶タク)、板金加工(銅板利用七宝焼)、被服製作(エプロン)、各学期の調理実習等生徒の能力や実状を考慮して実施している。

ここでは、他の学校で教材として取上げていないと思われる造花製作について説明する。

(一) 造花製作の経過

下請け作業としていた造花店の仕事にヒントを得、逆に材料を注文して、卒業式当日卒業生が胸につけるバラ記章を考案製作するに至った。

市販のものは紙製が多いが、本校のものは布製である。第一年次の販売は校長にお願いし、市内小・中学長校会で見本を配布、注文依頼をしてもらう。

それ以後は毎年注文があって、利用数が約五千個にも及ぶようになった。

(二) 造花製作の利点

作業内容が複雑で、長時間にわたるものは、特殊学級生には無理だとか不向きだと言う話もあるが、仕事がむずかしくとも分業形式にしたり、工程を細分化し、一人の活躍場面を限定するとそれぞれの生徒に合った仕事が生れる。造花製作では

1) 仕事が細分化でき、何かしらやれる仕事が二、三はある。

2) 細分化されているので、失敗しても一部分だけの修正ですむ。

3) 仕事の分量が多いので継続して学習ができ、自分の仕事をしっかり覚えられる。

4) 完成品を三年生は自分でつけて卒業する喜びと、市内外の幼・小・中学校に利用してもらえるので使命感が育つ。

(三) 造花作業の内容

造花(バラ)の芯から花弁(型ぬきは業者)、記章止めの安全ピン、リボンまでといろいろあるが、仕事の分担は次のようなものである。

・花弁を区分けする(四種類)

・材料となる各種部品を数える。

・花の芯を作る。

・花芯に一枚目の花弁をつける。

・二枚目の花弁をつける。

・三枚目、四枚目をつける。

・ガクをつける。

・安全ピンをつける。

・「祝卒業」のリボンたれを作る。

・「祝卒業」のゴム印を押す。

・アイロンがけをする。

・造花(バラ)にたれをつける。

・仕上げをする。

・製品の検査をする。

・製品の箱詰めをする。

・数量やラベルを書く。

・配達をする。受領印をもらう。

・代金を計算する。領収証の準備。

(四) 造花作業から

仕事を進めるのに

・服装を整え、手洗いをする。

・教室を工場に変える。(机の配置)

・用具、材料を運び準備する。

これだけを三年生が中心になり、休み時間にやる。教科学習では目立たない生徒が本気になって活躍する。

時間が始まると生き生きして、わからない生徒に教える者、自分の分担の仕事に指示されなくとも熱心に始める者といろいろである。

三年生を中心に経験のある者が一年生を指導する。一段階むずかしい仕事に挑戦する者もあったりして、活気のある作業学習が展開される

教師は全体の流れと、仕事が理解できない生徒の指導にあたり、製品の途中までの確認をし、指示していく。

 

四 作業生産学習の指導

 

(一) 校内での学習

作業学習には教科書学習には見られない体を動かしての活動場面がある。

工夫したり、形のととのったものにするためには改善しようとする考えや努力がいる。自主性、主体性、協調性公共心と養われていくものが数多くある。製品の配達にしても、その事前に道順、交通安全のこと、他校での挨拶のしかた、返事や御礼の言葉遣いと言う具合に、卒業後すぐ役立つ学習内容を含んでいる。

(二) 校外での学習

作業生産学習の一環として、年間に全学年、五日間、三年生は更に五日間の職場実習を行っている。本校は幸いなことに、市内にある漆器工場団地組合の協力のもとに、生徒に職業生活の大切さを学習させてもらっている。

 

おわりに

 

生徒の親たち(教師も含めて)は、机に向かって、国語、算数の学習をし一つでも多く、漢字や計算ができれば満足している場合がある。

将来、この子に何をさせて自立させるのかを考えもせず、できないから勉強をと強いるが、真の勉強は何か、もう少しじっくりと考える必要がありそうだ。

どんな小さなことでもいい。生徒の中にある将来に役立つ可能な芽を育てることこそ学習指導の基本ではなかろうか。本校にも現実には課題となることが沢山ある。その一つ一つを全職員理解のもとで、解決していきたいと思う。

 

 

 


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