教育福島0085号(1983年(S58)10月)-043page
な生徒には、A・B案の方法が取り組みやすいと考えられる。それに対し、何事にも積極的で、表現力も豊かで、創造力の豊かな、物事を発展的に考えることのできる生徒には、C案のような重大な家庭問題を対象とするテーマに取り組ませるのもよいであろう。A・B・C案いずれにしろ、ある事例に対する問題解決にはいろいろな方法があるので、その場に応じた適切な助言と方向づけをするのが難しい。
(ウ) 結論
「家族の役割と人間関係」を題材とする授業において、ロールプレイソグ法で展開したことは、生徒自身、従来と違って興味関心を持って意欲的に取り組み、今までの生活の中であまり強く感じていなかった家庭での「家族の一員としての役割」について反省し、みつめ直している,(作文、意識調査等から)ことから、一定の学習効果があったと言える。従って、ロールプレイングは役割意識を再認識させるための良い手段であるので、役割意識が低いために起こる種々の家族間の対立問題について演じながら、原因を考え、捉えさせるためには、適切と考えられる。また、交友面でも相互理解のための機会ともなり、教師にとっても、生徒の素顔をかいま見ることが出来、生徒理解の一場面ともなった。
(2) 家庭経営・住居について
この科目では、家庭一般で取り上げた「家庭の機能と家族関係」をうけて「家族関係とその調整」親子の問題、世代差のある家族の問題を解決するにはどうすればよいかを「ケーススタディ」と「ロールプレイング」で試みた。
1) ケーススタディによる授業の反省
ア、生徒からの資料が多く提出される等、関心度が高く、また、授業展開に深みを増し、理解度も高まった。
イ、グループ討議も活発に行われ、意欲的な授業が展開できた。
ウ、班編成の方法、資料の選び方、整理、検討、教師の関与の仕方が重要であることを痛感した。(図3)
図2 指導細案例
図3
授業実践後の考察(一部)
五 まとめ
ロールプレイングやケーススタディにより学習を展開してみると、生徒個々に興味関心を示し、積極的に問題解決の手段を考えるなど、意欲的に取り組み、思いがけない授業展開もみられ生徒と教師が一体となって授業をつくり上げるという緊張感、満足感が得られた。また、日頃学習意欲の少ない生徒も、役割が与えられると意外な面での活躍がみられ、学習効果も高められたように思われた。今後はさらに、教材の取り上げ方、問題提示の仕方、意志決定の仕方、解決への展開方法など教師側の関与の仕方についての十分な研究が必要であることを痛感した。
(岩瀬農業高等学校教諭 松本史子)