教育福島0085号(1983年(S58)10月)-048page

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ぼくは未来の船長さんだ

 

福島県立小名浜水産高校練習船体験航海

 

去る九月二日、いわき市の国際港小名浜の第一号ふ頭において、県立小名浜水産高校の練習船「福島丸」の中学生による体験乗船実習が行われた。当日は快晴に恵まれ、風もなく海は静かな凪ぎで、あたかも海外へ雄飛しようとする県内各地の中学生を、ほほえみをもって迎えるようであった。

この体験乗船実習は、当校が県下唯一の水産高校ということで、水産高校の一日体験入学とともに「福島丸」の実際を中学生自身の目と身体で理解してもらい、次代の水産健児の芽を育てようということで一昨年より始められたものである。今年は、遠くは福島・郡山市、相馬郡などの中学校や、いわき市内各中学校の生徒八十七名が参加し、午前、午後の二回に分かれて実際に外海に出て航海の体験をした。中には、いわき市立玉川中学校の女子生徒二名も参加し、海の男に負けじとばかり熱心に船内を動き回っていた。

午前の班では、午前九時より体験乗船実習の開会式が行われた後、福島丸の小松船長、乗組員の紹介があり、乗船上の注意をうけていよいよ乗船となり、中学生は期待とチョッピリの不安をまじえながらタラップを登った。

船上にあがると、ブリッジでは舵輪を動かしたり、レーダーやエンジンの遠隔傑作の説明を受けた。また、機関室に入ってエンジンの大きさに驚き、無線室ではモール.ス通信の交信に感心し、ファクシミリで新聞記事や天気図かそのままの形で電送されてくる仕組みに目を見張っていた。その他、実習生用の船室、サロンや食堂、造水機や冷凍機たど初めて見る設備に驚きの連続のようであった。

午前十時、福島丸は快適なエンジンの音を静かな波間に響かせながら五十五名の中学生や報道機関の人々を乗せて岸壁を離れた。港の外に出るや、今まで説明をうけた機械類に直接、手を触れることができるということで、中学生の中には、舵を手にする者、レーダーをのぞいては実際の風景と比較する者など甲板上を行ったり来たりと忙がしく動きまわっていた。しかし中には気分が悪くなって腰をおろしてしまう者も出た。

順調な航海が続くうち、船長室に陣どった中学生は、「将来は絶対船長になるんだ」と宣言したり女子中学生は通信室でレシーバーを年にあて「私も船に乗って、こうやって海の向うと通信したい」と早くも将来に夢を馳せる者がいた。やがて福島丸は進路を北に取り、海上より小名浜水産高校の偉容が白砂青松の海岸に浮かぶのを目にしてから反転して帰途につき、一時間半の航海を終えた。午後の班も三十二名の中学生や関係者を乗せて同じように体験航海を楽しんだ。

体験航海を終えた中学生にその感想を聞いてみると、楽しくすごせ、参考になったと口々にいい、充実した一日をすごして参加した全員がことに満足したようである。「前々回は海況不良で出港できず、去年も風波が強く港内巡航のみで終わってしまったので、今年は何とか航海を実現したかった。おかげで今日は天気も最高で船員や先生方の協力で受け入れ態勢も万全で、中学生諸君も快適に航海を楽しんでくれたと思う」とは学校側の話。

練習船福島丸は、総トン数四百九十八トンで全国でもトップクラスの練習船であり、毎年約九十日の航海を三回実施し、機関科、漁業科の生徒がマグロ漁などの漁業実習を行っている。操業は遠く南太平洋やインド洋で行い、その帰途、グアムやシンガポールに寄港してくる。体験航海は、この長期航海のほんの一部を学ぶにすぎないが、これをきっかけに興味と関心をもった多くの中学生が「海」に学ぶことに意欲をもってもらえればすばらしいことではないかと思う一日であった。東西南北

 

いよいよ出港だ

いよいよ出港だ

 

ブリッジの上で船長気分

ブリッジの上で船長気分

 

 

 


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