教育福島0086号(1983年(S58)11月)-035page

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できるだけ多く見つけ出すことなど有意義な講議内容であった。

○幼児理解の方法に関する演習

・担当する園児のある一人について、思い出されることを全て記述し、その中でどれだけ多くのプラス評価をしたか確認することによって、幼児理解の程度を判断する方法。

・共感性テストについての演習。

この外、演習は行わなかったが、文章完成法とも言われるWAI(フウアム アイ)による自己概念テストを幼児理解に応用する説明があった。

○ビデオによる幼児の行動観察演習

四グループに分かれ、グループごとにビデオを通して「有希ちゃん」の行動を観察記録し、各自の観察結果の共通点や相違点を検討し合った。更に、行動の継続時間と関連させた行動描写法、予め想定した特定行動の現れる頻度からみる行動見本法などについて、演習を行い、最後にテーマ、チェックリスト、観察記録などにまとめた。

 

〈講義・実技〉

 

「『リズム』指導のあり方」

 

お茶の水女子大学附属幼稚園

 

副園長 掘合文子先生

 

幼稚園教育要領の基本方針(5)「のびのびとした表現活動を通して、創造性を豊かにすること」と幼稚園教育指導書(文部省編)に示されている領域「音楽リズム」のねらいとの関連を解説され、更に、ねらいのうち「のびのびと動きのリズムを楽しみ、表現の喜びを味わう」ことや「感じたこと、考えたことなどを音や動きに表現しようとする」ことについて、具体例を通して講義された。その上に立って、後半の実技演習が展開された。

○リズム指導で強調された事項

1)一般に幼児は模倣性が強く、運動の模倣も積極的である。初めは簡単な動きの模倣から始まり、動きの要領を体得するにつれ、次第に運動の創造的な能力が伸びる。したがって、教師自身がリズミカルな行動を身につけ、幼児に反映させることが大切であること、

2)幼児の心の世界を知るには、共感的態度で接することが大切である。たとえば遊びでは、遊んであげるのではなく、一緒に遊ぶ態度で幼児の世界に入っていくこと。

3)必要なことは指示しなければならないが、最少限にとどめる方がよい。また、言葉で指示するより、幼児が自から自由な気持で動けるように配慮してやることが大切であること。などであった。

○実技指導で強調された事項

1)リズムは基本を正しく行い、体の重心の移動に注意する。歩く際は視線の高さを一定に保ち、首・肩・かかとに気をつける。走る際は足を伸ばし、跳ぶ際は幼児の動きに合わせること。

2)体操は運動の基本であり、正しく行うこと。

3)表現はリズミカルに、模倣するものになりきる気持ちが大切であること。

4)歌唱は、あまり長くない曲を選び、言葉をはっきり言うように気をつけること。

など、リズム指導の基本的な考え方についての指導を受けた。

○実技演習

のびのびと歩いたり、走る、跳ぶなどリズミカルな動きについて演習を行い、次に曲に合せて同様に演習した。

更に、ハトポッポ体操、スポーツマーチ、動物の行進、雨、シャボン玉、あひる、盆踊りなどの教材を通して動物や乗り物の動きを模倣、歌や曲の内容と体の動きとの関連や表現の仕方などについて、繰り返し演習した。

 

〈研究協議〉

 

研究協議では、五人の先生の研究発表をもとに協議した。実態に即した教育課程編成の問題、各幼稚園の実情に即した指導法のあり方や、家庭や幼稚園との連携の深め方、更には、個々の幼児の発達課題に即した安全指導の進め方など、幼稚園教育の全てにわたって具体的、実際的な話し合いが行われた。最後に、小林八重子指導主事より「幼稚園教育の一層の充実を図るためにも、今こそ原点に立ち返った、発想の転換が求められる」との指導があった。全体として、明日からの実践に直結する質の高い研究協議であったと思われる。次に参加された研修者の反省記録の一部を紹介しよう。

○河野先生の「幼児理解の理論と方法」では、毎日接してきた園児をよく理解しているつもりでしたが、今までの理解や方法がこれでよかったのか、改めて反省させられました。ビデオによる演習では、よく園児を見て心の動きを知ることの大切さを教えられました。この研修に参加できてよかったと思っています。

(福島市立三河台幼稚園 黒澤啓子)

○この研修で一番感銘したのは、堀合先生の「リズム」指導でした。私もその意義やねらいは理解していても、実際の指導ではどうしたらうまくいくのか悩んでおりました。実技指導を受けて、教師が単に歌い、演奏し、踊って見せるだけでなく、園児にその情景を思い浮かばせ、生き生き表現させることがいかに大切か、身をもって知りました。こんな実晴らしい実技指導は機会があればまた受けたいものです。

(天栄村立天栄幼稚園 武内紀子)

 

おわりに

 

研修された先生方の熱心さと折目正しい宿舎生活は印象深かった。研修生活で親睦も深まり、各地の情報も得られ、貴重な体験をしたとの声も聞かれた。

今後、本講座が現場で幼稚園教育に携わる先生方に、直接役立つ研修となるよう、講座の充実に努力していきたい。

 

 

 


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