教育福島0087号(1983年(S58)12月)-025page

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随想

 

教えることと学ぶこと

阿部 芳勝

授業に出て生徒に教えることができるだろうかという不安の日々が続きました。

 

私が、小名浜水産高等学校の漁業科専攻科を卒業したのは二年前です。在学中は、学習に部活動に、そして乗船実習にと、五年間の苦しくもまた楽しい日々を過ごしました。そしてこの春技能員として採用され母校に勤務を命せられた再びと、自分が授業に出て生徒に教えることができるだろうかという不安の日々が続きました。

また、水産高校には他の高校とは違って海洋実習があります。去る六月ごろのことです。一年生の海洋実習でカッターの操艇練習があり、最初は、カッターについての部分的な名称や、オールのこぎ方その他について細かな説明を行い、実際にホイッスルに合わせてこぎ始め、防波堤の外に出てからも順調にこいでいました。しかしながら、艇庫にもどろうとする時に数隻の漁船の波にあおられ危いと思ったこともあります。やはり生徒を乗せている以上安全を第一に考えた、より良い実習を行なわなければならない、ということと同時に、その時に応じた適切な指導をしなければならないということをあらためて痛感いたしました。水産一般の授業においても、編網や結索その他スプライス(ロープをからめながら結ぶ方法)等、細かな水産に関する実技が行なわれます。私はこの授業においては、生徒たちに多くの知識を得てもらい将来に水産関係の職場に就職した場合、現場でいつでも使用でき、かっ安全に製作することができるようになってもらいたい、という願いと同時に私自身、今以上に実技に関してあらゆる知識を深めなければならないと思います。

本校には漁業科・水産製造科・無線通信科・機関科の四科があり、それぞれのカリキュラムにより船舶の士官となる航海士、機関士、通信士さらには四級小型船舶操縦士、陸上では、ボイラー技士や冷凍技士となるための免許を取得することができるわけです。また普通科や専門教科を教育するばかりではなく、各先生一丸となって生徒に対して学校生活や校外生活の本当に細かな指導がなされています。生徒にとってこれから海上や陸上で働くためには大きな資格となるわけで、そのための知識をできる限り多く教えていかなければならないと思います。

しかし、私が生徒だったころ、先生が生徒を指導するのはあたりまえだと思っていました。たしかにあたりまえだと思いますが、生徒一人一人に対する指導というものは、私が考えていた以上になかなか難しく、本当に大変なことだと自分が教える立場になって実感いたしました。生徒から信頼されることがいかに難しいことかも知りました。

また、生徒会の部活動においては、私は、水泳部の顧問をしていますが、最初のころは思うように練習をすることができまぜんでした。というのも私自身、学生時代水泳部に所属し各種大会にも出場しましたが、しかしながら生徒に陸上トレーニングや泳ぎ方を教えるということは、別の問題であるといろいろ考えさせられることが多い毎日です。そのために私は、水泳の講習会に出たり、いろいろな本を読んだり、また、水泳に詳しい人に聞いたりしました。そのかいあってか最初のころよりは、なんとか練習内容もまとまってきたような気がします。

私は、母校で後輩たちの指導にたずさわることができることに喜びを感ずると同時にその責任を果たすために、もっともっと努力して、自分を高めていかなければならないと思うのです。

(福島県立小名浜水産高等学校技能員)

 

生徒といっしょに実習指導

生徒といっしょに実習指導

 

 

 


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