教育福島0088号(1984年(S59)01月)-043page

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的な指導力を高めながら合科的指導をとり上げていく段階にきていると考える。

この研究では、理科と他の教科の両方の目標を達成できるような授業実践までにはいたらなかったが、指導計画の中に理科を中心として図画工作との合科的指導を位置つけて実践した例と理科の中に国語や算数の指導内容を多くとり入れた合科的指導例を、試案としてまとめてある。

合科的指導については未解決な点が多く、授業についての考察も不十分なままの実践例であるが、今後、研究を続け、のぞましい、充実した授業の事例を累積していきたいと考えている。

 

二 高等学校理科2)指導に関する研究

 

(一) 理科2)の特色

 

高等学校理科2)は、必修の理科1)を履習したあと、なお一般的な理科の学習を深めて、自然科学的教養を身につけようと希望する生徒を対象に設けられた新しい科目である。

自然界にみられる事物・現象の中から課題をみつけて、探求的学習を通して科学の方法を学ばぜたり、自然環境について深い理解と認識をもたせることをねらいとしている。生徒自身によって探求の過程をたどりながら研究をすすめ、課題解決をはかっていくことは、科学的知識の理解にとどまらず、創造的能力を育成していく上でも大切な学習である。当教育センターでは学校現場の協力を得て、適切な課題をえらび、研究の進め方を中心に討議をかさね、理科正学習指導の資料をまとめた。

 

(二) 理科2)の学習内容

 

理科2)に示されている三つの項目は

1) 特定事象についての観察・実験

2) 自然環境についての調査

3) 科学の歴史的事例についての研究

である。理科2)の特色から、とり上げる課題は自然科学の系統的学習内容というよりも、個々の事象について理解を深める内容のもので一課題学習を通じて困難にも耐えながら研究を続けてまとめた喜びと充実感をもたせられるものがのぞましい。

1)の項目では、理科1)で履習した内容の応用的実験・観察や、日常生活に関連のある事象から生徒の実態に応じて課題を選定させることが必要である。

2)の項目では、生物、地学に関する野外調査や、理科1「人間と自然」「自然界の平衡」と関連して自然環境の調査をとり上げ、科学的理解を深めるもので具体的な課題にしぼって研究させたい。

3)の項目では、単に自然科学史上の重要事項について、年代的に羅列させるのでなく、先人科学者が探求してきた過程を、生徒に文献を与えて体験的にたどらせることにより、・科学の方法について学習させ、課題について合理的解決の能力が育成されていくようにしたい。

これら三つの項目から、生徒は課題を選択して学習することになるが、実際には多種多様な課題がでてくるものと考えられる。

 

(三) 理科2)指導上の留意点

 

1) 理科2)は理科1)を履習したあとにつづく科目である。学校によっては、二年で選択の物理、化学、生物地学を履習して、なお三年で理科正を希望する生徒がでてくることが予想される。

指導に当たっては同一課題でも生徒一人一人の学力、興味、関心に応じた指導ができるよう配慮が必要である。

2) 課題によって、個人研究、または共同研究の場合があり‘研究期間も研究の場もさまざまである。したがって授業は一斉授業の形態はとりにくい。

教師は、課題選定、研究計画方法について、予め明確な方針をたてて指導しておく必要がある。

また、根気づよく研究を継続する上での心構えについて、注意しておくとともに、随時、研究の進み具合いについて相談し、助言を与える必要がある。

3) 実験の結果、多くのデータが収集される。信頼のもてるデータをありのままとり上げることが大切である。

データをもとに考察を加え、いかにして合理的解釈をさせるかが、研究の最も重要な点である。場合によっては、仮説とちがう結論が導かれることもあるが、実験が無駄になったのではなく、立派な研究として評価してやりたい。作為的な方法は科学的ではないことを十分指導しておきたい。

 

本研究でとり上げた課題の主なるものを次にあげる。

1)特定事象についての観察・実験

・エネルギーの移りかわり−振り子の共振を例にして

・水道水及びプール水中の残留塩素の測定

・シダの前葉体の初期発生

・地表の太陽放射エネルギーの流れ

2)自然環境についての調査

・環境の汚染を調べる−マツの葉の気孔から

・火山灰中の造岩鉱物を調べる

3)科学の歴史的事例についての研究

・マイヤーの熱と仕事の実験

・電池と電気の化学作用

・光合成研究の歴史

・天動説から地動説へーケプラーの法則をたどる。

 

 

 


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