教育福島0091号(1984年(S59)06月)-011page

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学校における非行対策

 

(1) 「窃盗・万引」防止の指導

 

窃盗、万引の問題は、物に対する価値観のゆがみという社会的問題を背景として、児童・生徒の発達上の弱さが一時的に噴き出したものといえる。

成長するにつれて減少傾向を示す統計(表5)からもわかるように、大抵の場合、指導を適時・適切に行えば克服することのできる一過性の問題行動である。しかし、見過ごしたり、指導が不徹底であったりすると習慣化する傾向があり、感染力も強い。心理的に深いひずみを負っていて、疎外感や劣等感から盗みをする児童・生徒の場合は、人間の生き方にかかわる価値観の問題としてこの事象をとらえ、決して皮相的、一面的とらえ方をしてはならない。この意味で、人間と物との関係労働・生産・所有の問題を整理して子どもに理解しやすいようにして教え、働らく喜びを味わわせる実践に至る指導が大切である。

また、子どもの窃盗・万引は、社会生活のさまざまな問題が子どもの生活に複合的に強い影響を与えている結果でもあるので社会問題としての観点を忘れてはならない。したがって、保護者、地域住民と協力して、誘惑に負けない子どもを育てるとともに、環境の浄化に努めることが大切である。

 

(2) 「暴力非行」防止の指導

 

1)暴力をふるう子どもたちの問題

暴力をふるう子どもたちの多くは、生育過程で、発達上、さまざまな問題をもち、また、疎外感をもっていることが多い。

また、人格の形成にとって不可欠な自我の確立ができていない子どもが多くみられる。極めて自己中心的で、自分を抑える力、まわりの事柄を客観的に判断する力、自分の考えを人に伝える力、仲間と交流し一緒に行動する社会的な能力や共感する力などに乏しく、集団の成員として不可欠な資質が十分身についていない場合が多い。

特に、自分の振るった暴力に対する罪の意識が希薄であり、認識や価値観のゆがみがその根底にみられる。

したがって、暴力問題をもつ児童生徒の指導には、彼らの人格形成の側面から追求することが大切である。

2)暴力を許容する子どもたちの集団

暴力の起こる学校や学級の集団には、暴力に対する批判力が極めて弱い場合が多くみられる。弱いものいじめを止めようともせず、教師に知らせようともせずに見ている子どもたちがその典型的な例である。

そこには、暴力に対する恐怖感や無力感があり、また、暴力をふるったものと、受けたものとの問題で、自分には関係ないという無関心もある。また、時には、理由によって暴力は許されるものだとか、暴力によってしか解決できないことがあるといった暴力の肯定や共感さえみられることがある。

暴力を許す集団には、意識の中や連帯性にこのようなゆがみがある。その意味で、可能なかぎり暴力問題を子どもたちの集団の中でとりあげ、暴力を許さない集団の形成を目指すことが大切である。

3)暴力を許容する社会の状況

今日の社会には、暴力を売りものにしたり、賛美する風潮が濃厚に存在している。殺人、傷害、暴行などの惨事が日常的に起こり、新聞やテレビの取り上げ方にも問題が残る。

子どもたちは、このような日常の社会事象と俗悪な文化に触れ、健全な思考と感覚が損なわれ、人間の尊厳と基本的人権に対する認識をゆがめられていると言えよう。

児童生徒の暴力問題の背景には、このような社会的土壌があり、この背景をしっかり把握し、その改善を進めることとともに指導にあたることが大切である。

 

(3) 「女子非行」防止の指導

 

最近における女子非行の増加は全国的な傾向であるといわれるが、本県においても軌を一にしている。

女子の非行の内容を、刑法犯に入るものと、その他のものとに分けてみると、刑法犯少女の約八○・五%、九七九名が万引で補導されている。したがって、女子の非行防止にあたっては、万引防止の指導が特に重要となってくる。

また、最近における女子の行動が大胆、粗暴化の傾向をみせ、後輩の男子生徒を使っての窃盗や、タバコの火を押しつけるなどグループによる陰参な事例も報告されている。統計によるこれらの数はまだ少ないとはいえ、増加傾向が著しいので、今後大きな問題になるのではないかと懸念される。

しかし、女子の非行としては、刑法犯に入らない非行の方がより問題とも言える。薬物乱用、家出なども女子が男子を上まわる特有のものであるが、最近それにもまして問題なのは、性に関する非行の増加である。女子の場合、性的逸脱は、ともすれば将来への挫折感となり、真の人格的非行化へと進行する危険生が多分にあるからである。1)女子の性非行の現状

女子少年の性非行は、十六歳、十五歳、十七歳の順で多く、特に十五歳、十六歳の増加が著しい(表5)

その主流は高校生であるが、女子中学生も昨年よりは減少しているとはいえ、全体の十七・五%、八十六人を占めている。(表6)

動機別では、中学生の場合は、興味(好奇心)がトップを占め、次いで特定の男が好きでとなっており現代っ子の早熟ぶりが現れている。(表7)

また、好奇心から誘いや甘言にのっ

 

 

 


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