教育福島0091号(1984年(S59)06月)-022page

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即して行うよう配慮しなければならない。特に学校の教育活動全体を通して行う養護・訓練の指導は、全校の教職員の理解と協力を得て行うことが大切である。

〈指導計画の作成及び指導上の配慮事項の主なものを述べる〉

○実態調査等の資料は、指導計画の作成や個別指導に活用できるように分類、整理する。

○児童生徒の状態を固定的にとらえることなく、観点を明確にし、指導のかかわり方、指導経過、変化等を評価記録するなど、継続的に把握し資料として活用する。

○心身の発達の状態に留意し、自己理解を深め、自ら障害を克服する意欲を高めるよう指導する。

○心身的特性を十分把握し、安定した人間関係を保ち情緒不安定や心理的葛藤等の改善を図る。

○生活科の目標や内容、教科、領域を合わせた日常生活との関連を図る。

○日常生活の基礎となる基本動作の習得・改善にあたっては、具体的な生活場面を通して指導する。

○自己の病弱の状態に応じて、身体に対する回復の意欲を高め、実践的な行動がとれるようにする。

○言語発達遅滞の改善及び向上など指導を通して基礎的言語能力の向上を図る。

○対人関係を改善し、意思の伝達能力及び態度の形成を図る。

○視覚、聴覚と動作と言語とを結びつけ基本的概念の形成を促すように認知力の向上を図る。

○学校、寄宿舎、医療機関等との連携を図り共通理解のもとに指導する。

○心身の発達の状態を配慮し、学習に対する興味、関心を高め、自発性や意欲を育てる。

等概略を記したが、指導に当たっては、児童生徒との望ましい人間関係の上に、全人的な発達を促すよう児童生徒の自発性、自主性を育てるよう十分配慮していく必要がある。養護・訓練の指導においては、生徒指導、進路指導との関連が大きいので、教職員の共通理解を深め指導体制を整え指導に当たる必要がある。

 

四、基本的生活習慣の指導

 

心身障害児の指導において、個人生活や社会生活を営むために必要な基本的生活習慣、行動様式、態度を身に付けさせることは特に重要である。精神薄弱養護学校では、領域・教科を合わせた指導形態として日常生活の指導があるが、最も基礎的な内容を取り扱うものである。その内容は、衣服の着脱、洗面、手洗い、排泄、食事、清潔など身辺処理にかかわる基本的生活習慣やあいさつ、言葉づかい、礼儀作法、時間を守るなど集団生活をする内容を日常生活の流れに沿った活動を通して自立させる指導である。

登校、用便、朝の支度(衣服の着脱、持物の整理など)、係の仕事、遊び、手洗い、給食、掃除、終わりの会、帰り支度、下校などの諸活動があり、指導内容となる諸活動の中には、特別活動の内容と関係深いものがある。例えば学級会活動や学校給食に関する活動が含まれており、精神発達の未分化な児童生徒にとっては、各教科、道徳、特別活動及び養護・訓練等に関する広範囲な内容を含む活動としての意味をもつからである。日常の生活指導では、生活の流れにそって、実際的な状況下で指導が行われる。例えば、手を洗う必然性のあるときの手洗い指導であり、衣服を着替える必然性のあるときの着脱衣の指導を行うことである。毎日の反復して行う指導を通して、よき生活習慣の形成を図っていくことができる。これらの実際生活場面での指導を通して個性の伸長を助け創造的な生活態度の確立を図るとともに、人とのかかわり方、道徳的心情を高め、実践的な生活態度が形成される。心身障害児が社会的に自立していく上には、指導の充実に努める必要がある。

基本的生活習慣の指導は、内容である食事、排泄、衣服の着脱などの技能の獲得のみを目的にして訓練的に行なえば習得されるというものではない。子どもの認知力、運動力、コミュニケーション能力、社会性など総合的な能力の発達によって獲得されるものと考えられる。従って指導に当っては、その子どもの生活全体から、子どもの全体像を把握し、そこから指導課題を選定し、全体的な発達を図るように配慮していく必要があろう。基本的生活習慣の確立を図っていくには、特に家庭、施設等の連携が必要である。

 

おわりに

 

障害児の生徒指導の充実を図るためには、障害児の多様化の傾向をふまえ、生徒理解に対する研修を一層深め、教職員の共通理解に基づいて、指導体制を整え、きめ細かい指導に努めるとともに、生徒との望ましい人間関係を確立して指導にあたることが大切である。そのためには「子供を見る目」をみがき、

○共に人間の生き方を考え、共感的な態度と愛情をもって接する。

○子どもに教えられ、子どもから学びとる姿勢で接する。

○広い視野から、子どもを総合的、多面的に理解する。ことが必要である。

 

 

 

 

 


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