教育福島0092号(1984年(S59)07月)-011page

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強制的にやらされたという非難もあるだろうが、問題を考えさせるきっかけとしてはよかったと思う」 (原文のまま、抜すい)

3) 工場見学

(ア) 一学年がロングタイムを二時間まとめて学校近くの音響関係の電機メーカーの工場見学を行った。 (十一月)

(イ) 事後、感想をまとめさせるなどの指導を行ったが、新たな体験の印象が鮮明に表現されていた。協同や勤労に対する認識を深める契機となる感慨を持った生徒が多かった。

4) 視聴覚機材の利用

ホームルームや学校行事で行った勤労体験を生徒たちの手でスライドやビデオに収めた。自分たちの体験を作品にまとめ上げることも新たな体験であり、生徒たちは熱心に取り組んだ。

制作されたものは、今後の勤労体験学習の一つの教材としても活用していきたい。

(4) 学校行事におけるおもな実践

1) 校内大掃除

毎月末及び学期末に、放課後全校生徒による校舎内外の清掃と環境の美化を行っているが、特に五月と十一月には、いわき市が行う「いわきの町をきれいにする運動」と合わせて、通学路を含めて実施した。

2) 校外における奉仕活動

(ア) 奉仕活動を通して勤労を体験するために、新しく開校した、いわき養護学校の校舎内外の清掃を行った。

(イ) 一学年を二回に分け、夏・冬季休業の第一日に実施した。生徒にとっては養護学校を訪問することも級友とともに奉仕作業をすることも初めての体験であり、さまざまな感慨を持つとともに、勤労や奉仕に対する認識を深めたようである。事後に感想文を提出させた。

○「当日はあいにくの雨で、少なくとも美化活動をすることに関しては余り好ましくない天気だった。僕は雑草取りをしたが、くわを使っての除草は決して軽い労働とはいい難く雨ガッパを着ながらなので、汗が蒸発せず、服がぐしょぐしょになり、養護学校の校長先生がおっしゃっていたように、まさしく雨か汗かわからない状態であつた。おまけに下半身が泥だらけになり、汗や泥の後始末にかなりの時間がかかった。

しかし、それも『自分は五体満足で幸福な人間なんだ』ということを再認識することができ、苦痛とは感じられなかった。今回の作業は自分がどんな境遇にあるかを理解させてくれる絶好の機会であったと思う」(原文のまま、抜すい)

○ 今朝、雨が降っていたので作業は中止かなと思い、内心ほっとしていたところに電話があった。実際でかけるのはいやいやであったが、いま家に帰ってみるとなんともいえないすがすがしい気持ちがする。

僕にとって今日の経験は一生忘れられないと思う。この充実感は作業したことばかりではない。養護学校の先生からいろいろ説明された子供たちの生活状況についてのことに、大きく心をうたれたからだ。何不自由ない僕たちの生活を考えるととてもいたたまれない気持ちになってしまう。僕たちの悩みなんて本当にぜいたくな悩みだとも思われた。

今日の体験は、自分の生き方についても反省させられ、とっても有意義なものであったと思う。そして、いつか機会があったら、もう一度訪れてみたいと思う」 (原文のまま、抜すい)

 

四、実践の成果と今後の課題

 

(一) 校内の共通理解の深化

生徒の日常の生活態度や清掃への取り組み等からみた生徒指導上の課題の一つとして、公徳心を高揚するための実践をどのように展開していくかをとりあげたが、さまざまな活動を通して校内の共通理解が得られたことは、大きな成果であった。

公徳心にかかわる共通の主題のもとに全校一斉にホームルームの時間を設定したときの生徒の動きや反応、更に、奉仕作業等の実践場面における生徒の活動状況や生徒の感想文にみられるような反応が、勤労体験学習の意味や効果についての共通理解を深めさせ、次の実践の一つのばねになっていた。

また、全校あげて取り組んだこと、PTA新聞や同窓会報等に積極的に取り上げ周知徹底を図ったことなども、実践活動の展開をしゃすくした。

第一年次は主として一年生を対象としたが、さらにその輪を広げていくことが今後の課題の一つであろう。

(二) 活動場面設定の創意工夫

勤労にかかわる体験的な学習の意義や必要性を認識した上で、それを学校に課せられている進学のための準備と学力の向上にどのように調和させるかが、大きな命題であったが、教育課程における特別活動の領域に位置づけ、効果的に実践を展開したことも成果の一つである。

今後は、これに更に検討を加え、計画性と継続生を強めることが一つの課題である。

(三) 生徒の意識の変容

勤労体験直後の生徒の話し合いや感想文から、たとえば実施前は消極的であったが体験を通してさまざまな感慨をもち、ある種の感動すら覚えた内容

 

 

 


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