教育福島0092号(1984年(S59)07月)-032page

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今日は、半日日程である。時間は瞬く間に過ぎて終了行事となる。みんなで、「今日の日はさようなら」の歌をうたい、両校生徒一人一人の固い握手、約三週間後の合同野外活動での再会を約束しあったのである。

2) 合同野外活動

十月二十一日の事前交流は、合同野外活動への期待感を大いにたかめた。

合同野外活動の意義、コースと日程、集団行動や宿泊のきまり等を学習した後、いよいよ十一月十日を迎えた。

沢田中学校生徒が本校に到着、待ちうけた本校生徒と出発式に臨む。事前交流後の再会とあって、打ち解けた和やかな雰囲気があふれ、合同野外活動の成功を早くも予感させる。

郡山少年自然の家に予定どうり無事到着、オリエンテーションの後、事前交流と同じ編成による班ごとに、テーブルを囲んでの昼食をすます。

 

第一日の午後は、施設の全コースを使っての「サーキットトレーニング」である。初冬のたたずまいを見せる自然の中で思い切り体を動かす。障害児は、体力に応じて運動動作を工夫、最後までやり抜く気力を育てるようにしたが、班員どうし互いに協力し助け合うことにより社会性、連帯感の養成に大層役立った。楽しく係わり合った後の快い疲労を覚えながらやがて夕刻の行事を迎える。夕食の後、「キャンドルファイヤー」を体育館において行う。独特の厳粛な雰囲気のもとで、赤々と燃える営火の美しさに浸り、互いに持つ清純な心に触れ合う感動を改めて体験した。営火を囲んでのゲームやスタンツもかけがえのない思い出となった。

明けて第二日、両校生徒の互いの信頼は更に深まり、心を一層開くことができた。

朝食がすむと、最後の野外活動である「野外炊飯」を野外炊飯場で行う。献立はカレーライスである。役割に従い野菜を刻み、まきを割り、飯ごうで飯を炊く。共同で作業することにより進んで協力し助け合う中で、自分の役割の大切さに気づき、障害児は健常児の、健常児は障害児の気持ちを深く理解することができた。野外卓で、炊飯の様子やでき具合を話し合いながら、話の上手にできない障害児は身振りや表情にそれを表わしながら、手作りのカレーライスをほおばった。

退所式における別れの歌やあいさつは、互いに一層の名残り惜しさを深めたが、両校生徒は今日も一人一人熱い握手を交し、「さようなら」を口々に、学校ごとのバスに、分乗した。

3) 事後交流

これまでの間に芽ばえた両校生徒間の友情を更に深め、社会性や好ましい人間関係を一層発展させるため、年が明けた一日三十一日、表郷村営多目的研修センターにおいて事後交流を行った。

それぞれの学校を出発したバスが合流をして会場へ到着し、程なく今日の行事の開会となる。すでに三回目の交歓でもあるので「こんにちは」のあいさつも、集いの歌「若者たち」も上手にできる。もう両校生徒間に心配された違和感はみじんもない。

 

三、実施後の成果とまとめ

交流実施前後の生徒の変容については、生徒の感想文のいくつかを弓用して、それをうかがい知ることとしたい。

 

(沢田中学校 Aさん)

前は、石川養護学校生徒のことは人の話でしか知らなかったので町で見かけても「気のどく」ぐらいにしか思いませんでした。 (中略)みんな、案外したしみやすくて、帰るころにはすっかり仲良くなっていました。

 

(沢田中学校 B君)

養護学校の生徒は、人になじみずらい、先生がついていないと何をやるのかわからない生徒と思っていた。だが養護学校に行ってみてそんな考えがとれた。(中略)交流会がおわって、ぼくが学んだことは、もっと広い目で世間を見て、何か人の役にたたなければいけないと思ったことである。

 

(沢田中学校 Cさん)

この交流会でえたもの、それは、私の心の奥の閉ざされたとびらをあけてくれるかぎのようなものだったと思います。人は、心の奥に閉ざされたとびらをたくさんもっています。そして、あらゆる事を体験し、一つずつとびらは開かれてゆくのだと思います。

 

こうして両校生徒は、今回の交流活動を通じて、両校で当初設定した交流のねらい(前述)に対しては、かなりせまることができたものと確信する。

今後は、この実績をふまえ、両校間の交流を工夫して継続するほか、他校や地域社会との間にも「理解の輪」を広げるようにしたい。

 

共同作業の役割をきめる

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