教育福島0092号(1984年(S59)07月)-033page

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図書館を20倍

うまく使う法

県立図書館 司書

大堀高夫

 

図書館コーナー

 

図書館コーナー

 

最近の図書館は住民サービスや資料収集の面において著しい進歩を遂げてきましたが、図書館の問題を論議する場合においてもこれが主体であったように思います。

しかし、曲りなりにも「社会教育機関」という看板を掲げている図書館の教育機能が十分発揮されていない現状はやはり問題であり、図書館が今ひとつ世間に理解されていない一因ともなっているように思えるのです。

そこで、図書館が考えなければならない教育ということですが、これは資料の利用に対する指導と周知ということだと思うのです。

例えば、これが必要だと思えるもので特に気になる例を学生だけに絞ってあげてみますと、図書館の職員がカウンターにいます。すると、学生が不安げに寄ってきて、福島県に関する本はないかときくわけです。当然、ここは福島県立図書館ですから、当県に関する資料はごまんとあるわけで、どのような資料がみたいのか具体的にきいてみるわけですが、当人も結局わかってないわけです。

これは、レポートを書くのに何か面白い題材はないかと、ぶらりと図書館に来る場合もあるのですが、問題はテーマが決まっているのに調べる手順がわからずに、私は何を調べたらいいのでしょうという感じでききにくる学生が実に多いことです。

当然、図書館はこの様な人の指導・助言をするところで、どんどん質問に来てくれるのは歓迎するところなのですが、このような学生があまりに多すぎるのはやはり問題だと思うのです。

また、もう一つ気になる例としては、先の場合とは逆に求める資料があまりにはっきりしすぎて融通性のない場合です。

この場合は図や表にまで注文が及ぶわけですが、このタイプの学生はきまって求める資料がない場合、即座にあきらめてしまうのです。

現実的にみてそれ程都合よくいく場合は少ないわけで、似たような資料をまとめ直すとか少し工夫をすればよいわけですが、これをしないわけです。

めんどうなことをしたがらないのは誰でもあることですが、この二つのタイプの学生をみていると結局、ともに資料に慣れていないということが共通の原因としてあげることができるのです。

我々、図書館人がちょっとこれをみればいいと思っても、彼らはとてつもない面倒なことのように考えるわけです。

 

今回のテーマは「図書館をうまく使う法」なのですが、図書館をうまく使う人をみているとやはり感じるのは、資料に憤れていて気軽に扱っているということです。それに図書館サービスの隅々まで知っていてそれを十分に利用しているということです。

それに比べて使うのが下手な人というのは、実際に簡単なことでも構えてしまってなかなか資料の中へはいっていけないのです。

しかも、めったに資料を使わない人にとって資料を調べるとか資料を探して情報を収集するとかということがいかに大変であるかは、当然のことなのです。

ですから、学生の時から資料に慣れ親しむことが必要になってくるのですが、現在の学生をみているとそれとはかけ離れた状態にあると感じられるのです。

やはり、図書館やそれらの資料につきあう機会をもっと中学校や高校の頃から与えることから始めなければ、これは解決できないのではないでしょうか。

そのためには、公共図書館自体もこのことについて考えていかなければならないでしょう。そしてまた、それが公共図書館自体の振興にもつながっていくことではないでしょうか。

 

現代は情報化社会であり、資料を扱う技術がますます要求される時代になってきました。

このようなとき、図書館の資料を使うことだけではなく、図書館のサービスやその他の情報機関自体をうまく使いこなせるようになれば、これは二十倍どころか三十倍にも四十倍にも使えるようになるのです。

 

 

 


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