教育福島0093号(1984年(S59)08月)-009page

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一、教育目標の具現化

 

学校の教育目標は、終局的には、その学校の児童生徒一人一人が、自分自身の目標としてとらえ、具体的に実践したとき、初めて具現されたといえる。

したがって、学校の教育目標の具現ということは、抽象的に表現されている目標を具体化し、その具体化した目標を達成するための方策や計画をち密に立て、それを児童生徒が行動として具現し、態度化にいたるまでの過程ととらえることができる。

「教育目標は永遠に達成されない目標である」という言葉を聞くことがある。目標が漠として、高い理想を掲げているため、教師も児童生徒も達成の喜びがなく、実践意欲がわかないことに対する警告である。

教育目標を単なるスローガンに終らせないための方策を具体的にし、豊かな人間形成に更に大きな力を発揮させるよう、日々の実践を点検する必要がある。

 

(一) 教育目標の具体化

 

教育目標の具現に最も必要なことは、教職員全員が教育目標の意味内容を明確にとらえることである。

それは、教職員全員が、意欲的に具現の方策策定に参画し、「何を、いつ、どんな方法で、誰が推進役で、どこまで達成させるか」を明らかにすることが第一条件である。

したがって、前年度の教育目標を踏襲する場合でも安易に行うことなく、次の過程を経る必要がある。

ア 教育目標が、どのような背景のもとに設定され、法規、県や市町村の目標、児童生徒の実態、親や教師の願い等との関係がどのようかを確認する。

イ 教育目標の分析内容を点検し、整理し、構造化して、更に、一層の具体化を図る。

ウ 前年度の反省事項、児童生徒の実態を考慮して、本年度の重点目標を設定する。

エ 達成度を評価可能な具体的目標とし、達成のための組織、計画、方法を明らかにする。

1 学年・学級目標への具体化

学年目標は、学年の発達段階や教育課題に即して、学校教育目標を具体化し、その到達すべき指標を明らかにしたものである。

学年目標は、学年を担当する教師が共通の構えをもって、学年経営の推進に努める目標であり、学級目標を設定する際の方向づけをするものである。

その設定には、次の点に留意したい。

ア 児童生徒の発達段階や実態を明確にとらえ、どのような生活場面で、どの程度達成できるかを検討する。高学年は、達成不可能な目標になりがちなので注意が必要である。

イ 目標を重点的におさえ、教科・領域、その他指導全般にわたる細かな計画にする。

月毎の目標まで降し、家庭との連携を十分にとり、協同して指導できるようにするのが望ましい。

学級の目標は、その学級が目指す学級自体の目標である。学級目標が、その学級の実態や学級担任の教育観などによって、多少の違いはあるにしても、学校の教育目標、学年の目標を受けたものでなければならない。小学校中学年以上では、学級目標設定には、児童生徒が積極的に参加し、自らの目標として設定することが望ましい。そのためには、次の方法が考えられる。

ア 学校の教育目標、学年の目標を児童生徒に十分理解させる。

イ 学級の実態から、児童生徒の特に目標とすべき課題をとらえさせる。

ウ わかり易く、常に意識しやすく、評価しやすい表現で設定させる。

児童生徒に、自分自身の到達目標を設定させ、自己評価させながら努力させるような配慮があれば、目標意識が更に高まるであろう。

2 各教科、道徳・特別活動の目標への具体化

教育目標を教育課程の編成・実施や授業の実践にどう結びつけ、具現するかは、最も研究を深めなければならない課題である。学校の生活時間帯の大半を占めるこの時間に目標を達成することが最も必要なことはだれもが認めることである。

もちろん、学習指導要領で示す目標の達成に努めることが、教育目標の具現につながることは確かであるが、教師と児童生徒が意識してそれに努めなければ成果は期待できない。

したがって、自校の教育目標のどのような内容が、各教科・道徳・特別活動のどんな場で達成することができるかを検討し、意図的・計画的に指導が展開できるよう具体化する必要がある。そのためには、次の方法の幾つかを選んで実践することが望まれる。

ア 本年度の重点目標達成の視点から教育課程を編成する。

イ 現職教育の研究テーマを、教育目標より設定し、全職員で具現の方法を研究し、実践する。

ウ 教科・道徳・特活部会等より、共通して努力すべき事項を、毎週または毎月提案し、実践する。

エ 授業案に教育目標とのかかわりを記述し、授業に確実に位置づける。

オ 教育目標達成のための教科で努力することを児童生徒と話し合い、約束ごととか評価表をつくる。

 

(二) 具現のための組織

 

教育目標の具体化が進み、美しい表に整理されると、ややもすると教育目標が具現されたような錯覚にとらわれたり、学期末の評価の段階で実践すべ

 

 

 


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