教育福島0093号(1984年(S59)08月)-011page

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ている。学校ごとに、児童生徒の実態に即し、創意をこらす余地が他領域に比べて非常に大きい。これを工夫することによって、教育課程の実施に学校の独自性を生かし、自主的、実践的態度の育成を図らなければならない。

ウ 個を生かし、意欲的に取り組む授業を展開する。

児童生徒にとって学校生活の大部分は授業である。授業を充実させるための第一の要件は、授業における個への対応である。一斉指導の授業であっても、児童生徒一人一人をよく見とり、それに正しく対応して、個を確実に伸ばしていく、学習の個別化を大切にすることである。

第二の要件は、児童生徒が生き生きとして、意欲的に取り組む授業づくりである。そのためには、教材の開発や学習過程の工夫、また、作業や観察・見学、グループ学習などの多様な学習活動の導入を図ることが大切である。

 

(四) 教育課程の評価と改善

 

学校の創意工夫を加えた教育課程の編成・実施が期待されているので、各学校では、教育課程の充実のために、従来以上に教育課程の評価と改善に取り組む必要がある。

ア 教育課程の評価と改善の基本的な考え方

教育課程は、学校教育の全領域に及ぶ教育計画を統括するものである。したがって、評価の対象領域が広いため、漠然とした評価になりやすいので、ねらいを明確にして取り組まなければならない。また、評価の方法は、学校の実態に応じて工夫することが大切である。評価を進めるに当たって次の点に留意する必要がある。

○全教師が協力して、組織的に進めること。

○計画を立て、積極的に進めること

○客観的な資料を収集して進めること。

イ 改善への手だて

学校における教育の成果を高めるために、教育課程を評価の結果に基づいて適正なものに改善しなければならない。手だてとして次の点に留意する必要がある。

○教育課程の改善計画を学校経営の中に位置づけること。

○教育課程改善のための組織をつくること。

○教育課程の評価の結果に基づいて改善の方針を立てること。

○教育課程の改善事項を検討し、改善の具体策を作成すること。

地域や学校の実情及び児童生徒の心身の発達の傾向や特性に応じて、一層調和と統一のある教育課程の編成ができたとき、教育課程の改善がなされたことになる。

 

三、学習指導の質的改善

 

教師はだれでも、よい授業をしたい、これだけは身につけさせたい、自主的・主体的に学習させたいと願っている。

しかし、昭和五十七年度県中学校長会の調査によると、学習目標を明確にして授業に参加している子どもは、二割に過ぎないと報告している。

教師は、このような問題点を着実に掘り起こし、子どもの可能性の開発のため、授業の質的改善を積み重ねることによって、初めて願いに近づくことができるのである。

そのためには、教師自身が変革していく積極姿勢が大切である。

 

(一) 主体性を高める授業

 

児童生徒は、「わかりたい」「自ら学習したい」という強い欲求を抱いている。教師は、これらの欲求を刺激し、発揮させる手だてや場を如何に設定し、配慮するかを常に考究し、主体性を高める授業の創造に努める必要がある。

 

1 学習意欲の喚起

主体的な学習の成立は、まずもって学習への意欲である。意欲を喚起し、持続させる方法は数多くあるが、授業展開において、次の点が重要である。

1) 学習の動機づけの工夫

児童生徒が強い要求で目的地を選び、自分でエンジンをかけて、走り出したくてたまらない状態にすることである。

そのためには、

ア 児童生徒の心を強くゆさぶる事象・現象・話題等を与える。

イ 書く、話合う、実演する等の方法により、問題を明確にし、「手に入れたい」「調べたい」「やってみたい」などの意識を高める。

そのためには、児童生徒の興味、関心をとらえ、それを誘発させる教材の開発・提示の仕方等の工夫が重要である。

2) 成就感、達成感の会得

「わかった」「できた」等の喜びがなければ学習意欲はわかない。したがって、どの能力の児童生徒にも、成就感を抱かせる場を設定しなければならない。

3) 認められたい欲求の重視

教師や学級集団から認められたいという児童生徒の心理を上手に刺激することが意欲を起こさせる大きな要因である。これには、賞賛や激励の場の設定が第一の条件であるが、性格によって戒めの言葉があり意欲を刺激することもあることを心しておくべきである。

また、人間は切迫することによってはじめてやる気を起こす場合もあるので、時によっては指導の厳しさも意欲づけの一因になっていることに留意すべきである。

 

 

 


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