教育福島0093号(1984年(S59)08月)-016page
点である。
これら課題解決のために、次の点の改善・充実を図る必要がある。
(一) 児童生徒の問題行動等への適切な対応
教師の共通理解のもと、一致協力した指導による早期発見、早期対応に努めることが肝要であるが、教職員の一致協力を阻害する要因として次のような点が考えられるので、自校にその問題があるかどうかを探る必要がある。
ア 非行や問題行動を、「この程度のことなら」と見逃したり、指導に、「くい違い」が出ると、授業が乱れ、規律が無視されて、ますます指導が困難となってくる。
イ 教師間における不用意な批判や、児童生徒におもねる態度が生徒指導を困難にする場合がある。
ウ 問題が発生しても学級内のこととして隠したりすると、共通理解を阻害する要因となる。
これらへの対応としては、すべての教職員が生徒指導の方針、計画を周知して、一貫性、持続生のある指導を徹底することが大切である。 (非行等問題行動防止については、「教育福島」6月号を参照のこと。)
(二) 学業指導の充実
これまでの学業指導の考え方は、ともすると、学業不振の傾向を示す一部の児童生徒に対して、学習指導上の遅れを補ってやったり、誤りを正したりする、いわゆる治療的なものが多かった。しかし、学業指導は、すべての児童生徒を対象にして、自ら学ぶという積極的で意欲的な学習の態度や豊かな創造性などを育成しようとする開発的な指導に重点を置くものであり、この点において、生徒指導のねらいとまさに合致するものである。学業指導の充実は、そのまま生徒指導の充実に通ずるものである。
また、学校において、教師と児童生徒のふれ合いの場の最も多いのは毎時の授業である。毎日の授業実践の中にこそ生徒指導の機能が働く場であることを認識すべきである。
生徒指導の機能が生きている授業とは、次の配慮のなされている授業である。
ア 各教科の「ねらい」の中にこそ、生徒指導の「ねらい」そのものが含まれていることを理解して構成した授業
イ 児童生徒の個性、能力を十分把握し、個に応じて指導の手だてを加え、児童生徒に成就感を与える授業
ウ 一人一人の人格を尊重し、児童生徒を画一的に扱わない授業
エ 児童生徒の発達課題を的確に把握し、課題解決に意欲的にさせる授業
(三) 道徳教育、特別活動の充実
1) 生徒指導と道徳教育との関連
生徒指導は、生徒が道徳の時間で学習した道徳的実践力を日常の生活場面でいかに態度化し、実践するかを随時観察し、指導援助する役割をもっている。また、生徒指導が日常適切に行われている場合、問題解決場面での道徳的判断や道徳的態度、自己指導力の成長など、生活体験を通して得たものが道徳の授業をより効果的なものにしていくという相互依存性を有している。
2) 生徒指導と特別活動との関連
特別活動は、生徒に様々な形の集団生活を経験させ、教師の適切な指導援助のもとに、学校生活における諸種の問題やそれぞれの生活に課せられた発達課題に対して、「なすことにより学ぶ」経験学習を通して生徒の全人的な成長を目指している。
これらは、生徒指導のねらいと変らない。すなわち、生徒指導における集団指導は主として特別活動を通して行われるものであり、また、生徒指導における個別的な指導は、特別活動を、より効果的にするために補正する役割を果たしている。
(四) 児童生徒理解のための教育相談活動の充実
教育相談の充実のために、次のことがらに留意する必要がある。
ア 現状の見直しを図る
○すべての児童生徒を対象とする体制をつくる。
○児童生徒が、相談教師を選べる体制をつくり、それに対する職員間の認識を深める。
○学級担任だけが行うのだという誤解や過信をなくす。
イ 相談室以外での随所随時での教育相談を重視する。
ウ 相談結果が指導資料として、常に活用できるよう工夫する。
エ 教師自らの資質を高めるための研修の体制づくりをする。
(五) 家庭や地域等との連携の強化
児童生徒の問題傾向の多様化、広域化等に対応するためにも一層の連携が望まれる。
そのための態度としては、
ア 学級、学年の壁をはずし、あるいは学校の枠をはずして、近隣の小中高等学校と連携をとるよう努める。
イ PTA等に対しては、問題が発生してからではなく、いま学校での課題は何なのかを明らかにして協力を依頼するなどの連携を進める。
ウ 児童生徒の健全育成に関係する団体、公民館、子ども会育成会、警察など関係機関などと絶えず連絡をとりあい、絶えず情報交換、研究協議等を通して理解を深める。