教育福島0093号(1984年(S59)08月)-033page
2) 実態調査
○ 日常生活場面での道徳的実践の調査
○ 学級内の友達関係調査など。
3) 指導を進める上の留意事項
それぞれの指導を一貫した方針のもとに相互の関連を図りながら進める。そのための各指導における改善点や具体的に進める場合の配慮事項を前もっておさえた。
(2) 指導の実際と経過の考察
1) 道徳の時間の指導
望ましい行動とはどんなものか、どんな行動がどんな結果をまねくか、自分たちはどんなところに気をつけなければならないかをわかりやすくとらえさせ、実践意欲を育てる授業の条件を考慮し授業を進めた。
その授業の主題名は「あの時のぼくの気持ち(自主自律)・「かりた本(正直誠実)」・「みんなのものを大切に(公徳心)」であった。
指導を通して身につけたこと
ア、行動における原因と結果の関係に目が向くようになり、よく考えて行動することの大切さに気づくようになった。
イ、望ましい行動の判断基準に気づき、自分の行動のしかたを反省できるようになった。
ウ、道徳的な問題場面の受けとめ方が客観的になった。
2) 行動の場を通した指導
日常生活の中で自分の行動をよくしていこうという意識は低い。それは、「めんどうだ」という受けとめ方をするからである。これらの態度や意識を変えるために、積極的に望ましい行動をすることが自分の生き方を高め、現実の生活の上でも役に立つことを実感としてとらえさせていく。
それを主に次の場を通して進めた。
○授業の中では−−−書き方・算数・音楽・体育を中心に
○ 学校行事では−−−体育的行事を中心に
○ その他の時間では−−−給食時
・清掃時・放課後・係活動の時間
それぞれ真剣に取り組ませ、向上のみられるものを積極的に取り上げ、その努力を認めてやった。
指導を通して身についたこと
ア、掃除や働くことに力を入れ、学校をきれいにしようという意識が育った。
イ、体育的行事のなわとび大会では自分で目あてを決め、自己の能力に挑戦してがんばった。
ウ、教科の授業では練習問題に積極的に取り組み、技能をよく身につけるようになった。
(3) 説諭による指導
日常生活の中でおこる児童のトラブルは、いじわるをされたり、悪口をいわれたり不愉快なことが多い。
また誤って他人のものをこわしてあやまれなかったり、自分のなすべきことをおこたり迷惑をかけることが多い。
このようなことがおこるのは、自己中心的な考え方やあまえの心があるからである。これを改めるには集団生活において、一人一人の行動がどんな影響を及ぼすか、どんな行動が望まれるかに気づかせていく。
また、望ましい行動ができた場合は小さなことでも心がけのすばらしさを認めてやる。
その指導を主に次のように進めた。
○ 帰りの会の中に「生活の反省」を設け、行いのよかった人、悪かった人を取り上げた。
○ 問題のある行動で至急指導を要するものはその都度指導した。
指導して身についたこと。
ア、いいかげんな行動がなくなり、行動に責任を持つようになった。
イ、他人の立場を考え、自己中心的な行動が少なくなった。
ウ、失敗して迷惑をかけたとき、すなおにあやまれるようになった。
五、変容のようす
(1) 変容調査
1) 学級内の友達関係事後調査
好きな友達が男女共に増え、友達との心の交流が深まった。
2) 生活態度事後調査
・あいさつ・掃除・係の仕事のしかたなどが特によくなった。
(2) 教師の目から見た変容
けじめのある生活態度や協力的で活発な態度が多くなった。
特によかったことは、 一つ一つの行動に心がこもるようになってきたことである。休み時間でも静かにトイレに行ったり、給食の準備も清潔を心がけたりする姿が見られた。
(3) 実践意欲調査
「このごろしているよいことや努力していること」を書く調査では、−−−なわとびにがんばる・係の仕事を自分からやる・ゴミをみつけたら拾うなどよくやろうという意欲が各自にみられた。
六、結論
(1) 説諭による指導でくり返し指導したことは、自分をよくし相手にもよいという行動のしかたであった。それは道徳的な行動の判断基準であり、日常生活における道徳的判断力を育てるものになった。それは授業で価値の本質にせまる話し合いをする際、活発にするもとになった。
(2) 行動の場を通した指導では、望ましい体験の機会を多くしたが、着実に取り組むようになり実践意欲が高まった。それは授業の「価値の一般化」の段階で、更に深められた。
(3) 道徳の授業をより確実に成功させるには、日常生活における道徳意識の高まりや、道徳的生活習慣が身についていることが大切である。それがねらいの価値を深く追求していくもとであり、実践意欲を積極的に育てる要因であることがとらえられた。