教育福島0093号(1984年(S59)08月)-035page
の様子を、行動とその心理の言語事項に分けておさえていく。
イ) 音読指導について
全体として、少年の行動に視点を当て、状況の変化と人々の心理の変化に気をつけて読ませたい。特に、他の人々がどうしようもできない少年の緊迫感の場面の音読を重視し、主題である船長の判断力のすばらしさと父親としての愛情を深く読みとらせたい。
ウ) 表現読み指導について
物語の主題が強く表われている第四の場面を表現読みの取りあげ指導の文章とする。そのねらいとして、
○ 会話文のみならず、会話文を支える地の文の読み方を工夫させる記号づけの指導
○ 取りあげた文章が前回の「春の歌」より長いため、記号づけにできるだけそった表現読みをさせる。
○ 自己評価は、自分の読みの問題点をより具体的に書かせること。
3) 指導の展開
ア) 主目標、言語に関する目標、音読の目標の設定。
イ) 主目標、言語に関する事項、音読の指導計画
ウ) 授業展開例(省略)
エ) 表現読みの記号づけ(児童の資料1参照)
資料1 児童の表現読み記号づけ
4) 指導の考察
ア) 言語に関する事項について
児童の感想文には、言語事項を大切にしながら主題に迫った作品がかなり多く見られた。例えば、船長が息子の危機を認め叫んだ言葉「海へとびこむんだ。うつぞ」に着目して、「…助けることばかり私は考えていた。船長は反対に『うつぞ』と自分の息子を悪者扱いにしている。でも、こうするより仕方がないのだろう」と感想を述べ、船長の判断力の良さとその気持ちを深くさぐっている。
イ) 音読について
地の文と会話文の読み方に工夫がみられ、少年の様子と船長の気持ちがよく表われるよう音読することができた。
(テープ資料は省略)
ウ) 表現読みについて
本題材においては、児童一人一人の記号づけがより確かな記号づけになるように、全体の意見を聞き入れてHPシートに記入し表現読みを実践した。
自己評価も「所々、声が小さい」、「プロミネンスがはっきり言えない」「会話に迫力がない」などと、記号づけの観点からより具体的な評価となり、さらに、共同評価でより確かな評価となった。(児童の資料1参照)
(3) 一つの花(省略)
五、研究の成果
(1) 言語に関する事項を授業の中で丁寧に扱い、主題が強くこめられている場面を表現読みすることで、正しい語句解釈をして主題に迫る感想文が数多くみられた。
(2) 指導過程の中で、言語・音読の目標、計画を位置づけて設定したため、単位時間内においては指導の意図をはっきりさせることができた。従来の単なる指導過程と異なり、どこで何を読ませ、どの言葉から何をつかませるかが明確にされたため、授業の中では本文に根をおろした話し合いができた。
(3) 表現読みの実践を通し、その記号づけの意味が分かり、その観点から自分の音読を的確に評価することができた。前述の四、実践の「とびこめ」の考察を参照されたい。
(4) 自己評価を生かし、音読能力を向上しようとする意欲がみられた。あまんきみ子作、「すずかけ通り三丁目」を音読させ、実態分析と同じく音読分析した。その結果、各項目において評価がCの段階は34%以下であり、B段階以上は七十%を越した。(分析結果2参照)
六、今後の課題
○ 表現読み指導をより効果的にするため、どの題材でどこを表現読みさせるか系統化した指導計画が必要であろう。
○ 児童一人一人の自己評価、向上を大切にしながらも、それらを集約・分析し全体の読みのつまずきを知らねばならない。