教育福島0094号(1984年(S59)09月)-031page
ためか、たかをくくったような顔をしていた。
3彼は、この学校は男女共学だとたかをくくっていた。
4彼女は、私の話は本当だとたかをくくっていた。
5彼は、私のことを先生だろうとたかをくくっていた。
例1)我々は、相手チームはさほど強くないだろうとたかをくくっていたのだが、思わぬ反撃に一瞬たじろいだ。
2)今度こそいい成績に違いないとたかをくくっていたところ、意外な結果に終わり私は落ち込んだ。
3)敵の兵力は味方の半分にも満たないとたかをくくって楽観していたら、敵の猛然たる反撃に蹴ちらされてしまった。
※(比較的日常的な用語かと思っていたが、未知の語句としてとりあげた生徒が多かったことと、例1〜5などのような用例がでたことに驚いた)
◎おしのように執鋤く黙っている。
〈執念深く。じっと強情に〉
例1彼は執鋤く考えることが嫌いです。
2その蛙は執働く石の上に座る。
3彼は執鋤く我慢していたが、そのあまりの痛さについに大声をあげた。
4彼女があまりにも執鋤く観察していたので、その芋虫は顔を赤らめた。
5その宝石は執鋤く光った。
6S君は誰に何を言われようとも執働く自分の考えを変えない。
例1)私は彼を執鋤く問いつめて秘密を聞きだした。
2)「いいかげんにしろ」と刑事が怒鳴ったが、容疑者は執働く沈黙を守っていた。
3)その借金取りは執働く私たちを追い回した。
4)彼は先生の質問に対して執働くだまっていた。
5)けんかに負けたその少年は、くやしそうに相手を執鋤くにらみつけた。
6)秀吉は執鋤く家康に上洛をせまったが彼は仲々承知しなかった。
◎外にはただ黒洞々たる夜があるばかりである。
〈ほら穴の中のように、あたり一面まっくらで見分けのつかないさま〉
例1たくさんの悩みのため、僕の心は黒洞々だ。
2私は黒洞々たる戦時下の中で、平和のおとずれをひたすら願った。
3授業中僕は眠るまいと努力したがまもなく黒洞々たる意識の闇にひきこまれた。
4戦いは終わり、敗者は黒洞々たる闇の中へ消えていった。
5敵に捕った彼は、黒洞々たる毎日を送っている。
6将来警察官になるんだと言っていたA君は、黒洞々たる仁義の世界へとあしを踏み入れていった。
例1)その炎は里洞々たる夜の空を真紅に染めていた。
2)黒洞々たる地下室の中でキラリと猫の目が光った。
3)黒洞々たる洞窟の中を探険隊は進んでいった。
4)黒洞々たる闇の中を、何度もつまずき転びながらひたすら私はその光を追いかけた。
5)もし、太陽がなくなってしまったら、この世は黒洞々たる闇の世界だけになってしまうだろう。
(二) 既知の語の意味、用法の深化をはかる指導の一方法と実例
1自分が知っている語句のうち、その意味や用法が自分のと違っていると感じた語句をあげさせる。
2多くの生徒が共通にあげた語句をいくつかにしぼる。
3それらの語句について、今まで自分が理解していた意味で短文を書かせる。
4小説「羅生門」の文脈の中での意味用法を学ばせる。
5その用法にしたがって再び短文を書かせ、各自の理解度、語彙の深化を確認する。
6さらに必要があれば指導を加える。
A、日の目
語意1)日の光、太陽の光線、日ざし。
2)「日の目を見る」II今まで埋もれていたものが世に知られるようになる。世に出る。
「羅生門」における用法
そこで日の目が見えなくなると、だれでも気味を悪がってこの門の近所へは足踏みをしないことになってしまったのである。
1)の意味で用いているが、「−が見えなくなる」という、いかにも2)に近いような言い方をしているので混同しがちである。「日の目」という不気味な感じを与える文学作品としての効果的な表現である)
既得の語としての用例
○長い間の努力のかいがあって、彼はようやく日の目を見ることができるようになった。
○失敗をしでかして、しばらくの間、父は会社で日の目を見ることができなかった。
○彼女の作品はついに日の目を見なかつた。
×私たちは日の目を見るために海岸へ行った。
(2)の意味での「 を見る」という用例が多く、本来の第一義的な意味としての1)の用例はほとんどない)
拡大、深化された用例
・いつの間にか日の目も落ち、暗黒の支配する世界となった。
・日の目がまぶしい夏の午後であった。
・どす黒い雲が日の目を隠した。
(文学的な文章表現の用法が多い)
B、足踏
語意1)足で地を踏むこと。足拍子。2)進行せずにそのままの位置で両足