教育福島0094号(1984年(S59)09月)-034page

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教育センターから

 

多次元診断

−教育相談の事例を通して−

 

はじめに

 

近年、青少年の問題行動が増加しており、それについての適切な対応策を講じる必要性に迫られている。

従来、問題行動への対応は、ややもすると問題行動の現象面だけにとらわれ、総合的な診断をもとにした指導がなされていないと考えられる。そのため、子供を十分に理解できず、問題行動が深刻化しその繰り返しが多くみられていると思われる。

当教育相談部において、問題行動の原因を子供の生育歴にそって検討した結果、身体的・心理的・環境的側面などにそれぞれ問題があり、それらが複雑にからみ合って問題行動を引き起こしているものがほとんどであった。そのため、総合的な診断に基づいた指導の重要性から多次元診断の研究に取り組み成果を上げている。

問題行動の診断や指導方法、さらに今後の課題について、事例を通して考えてみたい。

 

一、多次元診断

 

多次元診断とは、子供の全体像を生育歴にそって、成長に影響を及ぼす多くの次元、すなわち、多次元から総合的に診断し理解する方法である。

多次元には次の四つの次元がある。

生物的次元…身体・生理的側面を知るもので、器質的な問題や身体症状などに関すること。

心理的次元…心理的側面を知るもので、性格や情緒面などに関すること。

社会的次元…環境的側面を知るもので、家庭や学校生活などに関すること。

実存的次元…人間として存在する意義を知るもので、尊敬する人物や職業観などに関すること。

 

二、事例

 

(一) 主訴 不良交友

(二) 対象 A男 高校一年男子

(三) 問題の概要

高校入学当初から、頭痛や腹痛を理由に遅刻・早退・欠席が続き、学習意欲も低い。また、帰宅後は、中学からの仲間と夜遅くまで遊び帰宅も深夜に及ぶことが多い。さらにシンナー吸引、バイク窃盗で警察に補導された。両親の注意には全く耳をかさず、親子関係も悪い。

(四) 多次元診断

(1) 各次元の内容(詳細は省略)

1)生物的次元

・出産時

未熟児で出生した。

・身体的発達・特徴

第二次性徴の発現は、中学三年時であった。小柄でふっくらした体型をしている。脳波の異常は認められない。

・睡眠

小学四年ごろから現在まで入眠困な状態が続いている。

・言語

発達に問題はない。中堂二年ごろから投げやりな表現をするようになった。

・習癖

乳・幼児期に指しやぶり、小学時代につめかみとアイテックがみられた。中学時代から現在まで肩のすくみ(肩のチック)がある。

2)社会的次元

・家族構成(図1)

家族システムの構造

情動面やコミュニケーションの面などで、家族間の結びつきをまとめたものを家族システムの構造という。

両親と子供二人の関係は次のように

 

図1 家族構成

 

 

 

 


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