教育福島0094号(1984年(S59)09月)-035page
なっている。 (図2)
・家庭内の雰囲気
旧家で祖父母中心の家庭である。そのため礼儀やしつけに厳しく、子供の養育も祖父母が中心である。母親は父親のふがいなさに不満であり、祖父母とも不仲である。家庭内に笑い声が少なく食事の時も楽しい雰囲気はない。
・両親の性格・養育態度
父親は、やさしいが小心で世間体を気にし、母親は、勝気であたたかさに欠けるタイプである。
両親とも、養育態度は拒否的であり一貫性がなく、互いの養育態度に不満を抱いている。また、父親は、期待過剰であり、母親は、厳格である。
3) 心理的次元
・知能・学業
知能偏差値は五十一である。学習成績は、小学校低学年までは上位であったが、高学年から学業不振になり、中学校時代は下位になった。
幼稚園・小学校時代に登園、登校をぐずったことがあった。中学から高校にかけ欠席が多くなった。
・性格・情緒
小学校低学年までは素直であったが、高学年ごろから神経質な面がみられ、感情的になることがあった。中学校時代にさびしい気持を訴えている。現在は、YG性格検査(図3)にみられるように、情緒不安定、社会的不適応の傾向が強い。また、活動的な面もあるが回避傾向もみられる。
・対人関係
幼稚園、小学校時代から友人が少なかった。中学校三年ごろから望ましくない交友関係がある。両親に対して、自分から積極的に接することが少ない。弟いじめが中学校時代から続いている。
・趣味・特技
特にないが、現在は、テレビゲームに熱中している。
4)実存的次元
尊敬する人物はない。両親や学級担任を小学校四年ごろから嫌っており現在まで続いている。将来については、夢がなく、高校進学にも消極的であった。
(二) 多次元診断マトリックス
各次元の問題行動に関連あると考えられる事がらを時間の流れにそってまとめ、図式化すると図4ようになる。
(三) 診断
多次元診断マトリックスを基に次のようなことが考えられる。
旧家に初孫として誕生したことと、未熟児であったこと、また、祖父母の権限が大きいため、祖父母が養育の中心となり、両親の愛情を十分に得られなかった。そのため、ストレスが生じ、多くの身体症状を示したり、情緒的に不安定になった。
父親は、男性的な面に欠けており、また、父親としての働きかけが少なかったこと、母親は、女性的な面に欠け、さらに拒否的に接したことなどから、両親への不信がたかまり、男性的な面の未熟さにつながった。
学校では、以上のことについての理解不足があったため適切な対応が十分でなかった。
つまり、問題行動は、子供が家庭や学校から愛情を獲得したいためのシグナルと考えられる。
(四) 指導方法
主な指導事項は
・身体症状をなくす
・情緒の安定をはかる
・親子関係の調和をはかる
・将来について考えさせる
まず、身体症状の改善には、医療機関と連携を図った。学校とは、問題行動について共通理解を図った。家庭では、両親からの積極的な話しかけを基
図2 家族システムの構造
図3 YG性格検査プロフィール