教育福島0094号(1984年(S59)09月)-044page

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美術館だより−

 

開館記念展第三部

「東北現代美術の状況」展

〜予告〜

 

県立美術館では、開館記念展覧会の一環として「現代東北美術の状況」展を開催します。

この展覧会は、本県をはじめとする東北六県の出身、およびゆかりのある作家五十九名の作品を一堂に集めて展観するもので、日本画・洋画・版画・彫刻の四部門に亘る約百六十点の作品群は、出品作家の多様な個性と関心が、刻々と変化する現代社会の状況と交錯する場で生みだされたもので、観覧者の期待に充分こたえ得る展覧会になることでしょう。

 

この展覧会は、出品作家の決定に選考委員会方式を採用し、二度にわたる委員会の審査を経て上欄の作家が選ばれました。これを県ごとの作家数で見ますと、福島・山形の二県で出品作家の半数を占め、また部門ごとの比較では洋画と彫刻の出品作家が全体の約三分の二を占めるなど、この地域の美術の大きな動向がこの表からも窺えます、

なお、展覧会の会期中に、美術評論家・作家などをゲストに迎えたシンポジウムを催し、本県をはじめとする東北地方の美術の今日と明日の姿について考える機会がもたれますので、是非御来聴ください。

 

会期

10月13日(土)〜11月18日(日)

部門

日本画・洋画・版画・彫刻

選考委員

大島 清次(美術評論家)

酒井 哲朗(宮城県美術館学芸部長)

佐々木直比古(美術評論家)

佐藤  光(前福島県文化センター館長)

弦田平八郎(神奈川県立近代美術館副館長)

三木 多聞(文化庁企画官)

 

収蔵作品紹介2)

 

「神の祈り」

関根正二作

白河市出身の洋画家、関根正二(一八九九〜一九一九)は、わずか二十歳と二ケ月でその短い生涯を閉じますが第五回二科展(一九一八年)で、代表作「信仰の悲しみ」他の作品が樗牛賞を受けるなど、天才的画家として知られています。

関根が小学生の時、一家は、東京の深川に移り住みます。小学校卒業後、印刷会社の図案部に勤めますが、この頃から洋画を志し、本郷絵画研究所にも通います。一年程後、会社をやめて、二ケ月間放浪し、旅先で河野通勢と知り合い、ルネッサンスの大家たちの画集を見せられ影響を受けます。また、第二回二科展(一九一五年)に出品された安井會太郎の滞欧作をみて、色彩に開眼したといわれています。

彼は、一方では、久米正雄の監督による戯曲の背景を描いたり、今東光や東郷青児らの芸術家たちとも交わり、少からず影響を受けました。

この作品は、「信仰の悲しみ」と同年に描かれたもので、夜空を思わせる背景の中で、白衣をまとって歩むかのような二人の少女が配された画面には宗教的な情感といったものが漂っています。

(制作年一九一八年頃、油彩・キャンバス、六九・五×四一・五センチメートル)

 

出品作家一覧表

 

 

 

 


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