教育福島0095号(1984年(S59)10月)-008page
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特集〔1〕
学習指導の展開
高等学校
社会
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日本史における「地域社会の歴史と文化」についての実践例
“課題学習による指導法”
県立須賀川女子高等学校
教諭 坂路忠信
1、まえがき
今回の学習指導要領改訂にともない高等学校社会科「日本史」に関し、教育課程審議会の答申は要約すると次の二点である。
第一に文化を総合的に考察する学習の充実、第二に地方の文化の学習や主題学習の充実による生徒の主体的、意欲的な学習活動の展開である。
特に後者の点は、高校の「日本史」学習の「方法」の改善を主なねらいとしている。知識の伝授とそれの暗記という歴史学習の型から脱皮し、高校生としての「歴史学習方法」と「歴史解明の手段」とを体得させることにあると思われる。
さらに「地域社会の歴史と文化」が学習指導要領の「内容」の中に位置づけられたのは、今回の改訂の大きな特色の一つである。その意味で、「地域学習」のねらいと効果の基本的な考え方を次の四点について述べてみる。
第一に地域社会の生活者の目で見つめることにより、地域の課題と現在の地域の形成過程を明らかにする視点を明確にすることができる。また、その視点から歴史的文化的事象を見ていくことができる。
第二にそれにより、歴史を自己に関するもの、血のかよったものとしてとらえ、自己認識の糧としていくことができる。
第三に身近な生活舞台における事象が対象であるから、その地域の具体的諸条件の中で事象を総合的に考察することができる。
第四に日本の歴史の展開を、地域の歴史の具体相の中にとらえることができる。また、それによって、日本の歴史全体を見直し、そのイメージの再構成の契機ともなりうる。
以上のような改訂にともない、「地域社会の歴史と文化」が重視されるに至ったが、高校における地方史学習の取扱いや実施状況、問題点についてどのような状況にあるかを述べてみる。
一、実施状況 各学校での実施に違いが大きい。進学校での実施例は特に少ない。
二、実施形態1)各単元の導入として関係のある地方史を扱う。2)日本史全体と関係深い部分を地方史として深める。3)主題学習として、地域開発、衣食住の変遷などとして取扱う、などが実施されている。
三、取り扱う資料考古学的遺物・遺跡、社寺、史跡、近世地方文書、市町村史などである。フィールドワークによって具体的事物を見ることと、市町村史の活用が多い。
四、実施上の困難点1)日本史学習が教材過多で、時間数にゆとりがなく、地方史学習まで手がとどかない。2)生徒が地方史に関心をあまり持たない。3)教師は地方史になじみがうすい。
五、実施上の問題点 1)断片的な事象を取り上げがちになる。2)細部の事象を取扱うと、複雑で難しく、歴史の興味を失わせる、などがある。
六、今後の課題 歴史学習の全体計画の中で地域における歴史学習の計画を立てる必要がある。いわゆる、地方史学習の本質を明確にして歴史学習全体の中に位置づけることに努めるべきである。
2、実践事例の概要
まえがきで述べた観点から「地域社会の歴史と文化」を年間学習指導計画に組み入れ、一つの主題による課題学習によって「歴史学習方法」と「歴史解明の手段」を考察して実践した。
(1)年間指導計画の位置づけ
今回の実践では「原始・古代」「中世」「近世」「近代・現代」と大単元
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