教育福島0095号(1984年(S59)10月)-024page

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べたように、指導内容の選択・組織は領域別、教科別に行うが、実際の指導を計画し、展開する段階では、前節で挙げた理由から、領域・教科を合わせた指導を行うことが重視されている。

現行の特殊教育諸学校学習指導要領解説−養護学校(精神薄弱教育)編−では、精神薄弱養護学校における指導の形態を、領域・教科を合わせた指導と教科別、領域別の指導の二つに大別し、領域・教科を合わせた指導の形態として、日常生活の指導、生活単元学習、作業学習等を挙げている。また、教科別、領域別の指導の形態については、国語、算数(数学)、音楽等の教科別の指導と、道徳、特別活動、養護・訓練等の領域別の指導を挙げている。(図1)

次に、各指導の形態の考え方や指導上の留意点について述べてみる。

(一) 領域・教科を合わせた指導

1) 日常生活の指導

日常生活の指導は、「児童生徒の日常生活を充足し、高めることを意図して、日常生活に必要な内容を、日常の生活の流れに沿った活動をとおして指導しようとする指導の形態」である。

学校における児童生徒の日常生活を構成する、毎日一定時間にほぼ同じように繰り返す活動には、表4のようなものがある。また、これらの活動に含まれる主な指導内容は、表4の右のようになろう。

日常生活の指導においては、これらの指導内容を教科別、領域別に分けないで、日常生活の諸活動の中に統合されたかたちで指導が進められる。

日常生活の指導を進めるに当たっては、次の事項に留意する必要がある。

○ 個々の児童生徒の実態を把握し、実態に即した個別の指導計画を立てて指導を進めるようにすること。

○ 日常の生活の流れに沿って、実際的な場面を通して指導を進めること。

○ 個々の児童生徒の日常生活が、次第に自立的になり、発展するように段階的な指導を進めること。

○ 他の教師や保護者の協力を得ながら、一貫した対応や指導ができるようにすること。

2) 生活単元学習

生活単元学習とは、「児童生徒に、生活上の課題処理や問題解決のための一連の目的活動を、組織的に経験させることによって、自立的生活に必要な事柄を、実際的・総合的に学習させようとする指導の形態」である。

生活単元として従来よく取り上げられてきたものには、季節を素材としたもの(春の野山、夏の生活など)や行事を素材としたもの(運動会、学習発表会、遠足など)、課題を素材としたもの(新しい友達、絵地図作りなど)等がある。

しかし、近年、対象児童生徒の障害の重度化に伴い、「乗り物遊び」「砂・どろ遊び」など遊びを素材に単元を組織する試みが多くみられるようになってきている。なお、生活単元学習の前段階の指導の形態として、遊びの指導を位置づけている試みもあるが、さらに実践的な検討が必要であろう。

生活単元学習は、領域・教科を合わせた指導の代表的な形態である。このごとからすると、生活単元を組み立てる場合、まず、児童生徒に応じた各領域や教科の指導内容を押さえ、次に、これらに応じた活動を選定して単元を構成するという手順も考えられる。

しかし、前述の生活単元学習の考え方や趣旨からすると、まず、児童生徒の生活に根ざした目標や課題を含んだ単元の活動を選択・組織し、その上で指導内容が押さえられることになる。

したがって、生活単元学習における児童生徒の活動は、直接的には、児童生徒の生活的な目標や課題を解決するためのもので、結果としていろいろな領域・教科の内容が習得される。

生活単元学習の展開過程は、単元が例えば、「町の模型を作ろう」、「遠足をしよう」という場合、みんなで計画し、準備(練習)し、実践し、反省するというように、計画、準備(練習)、実践、反省という四つの段階になるのが典型的である。

だが、児童生徒の障害が重度化し、未発達な場合は、このような展開過程は無理である。

未発達な児童生徒に対しては、同じような活動を繰り返しながら、少しずつ変化をつけて、活動をしだいに発展

 

図1 指導内容の分類形式と指導の形態

(小出 進による)

 

 

 

 


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