教育福島0095号(1984年(S59)10月)-032page
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る。高校への進学率の上昇に伴い、生徒の多様化が叫ばれているが、本校も例外ではなく先生方が、毎日の教授過程で、いかに効率よく教授目標を生徒達に伝達するか、その方法に苦慮しております。
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今年の夏季休業に入り間もない七月末、東京工業大学教授、坂元昂先生の講義を聴く機会を得て、私自身深く反省させられました。そして、授業とは、中核が、生徒の学習過程と、それを円滑にするために教師が、援助・指導の手をさしのべる教授過程とが統合された教授学習過程であり、黒板・OHP・VTR・LL・マイコンなどの教育媒体システムを通し、教師と生徒との間で、情報の相互伝達が行なわれ、その結果として、教師及び生徒側に行動変容が生ずる過程であり、次のようなステップから成っているという。第一のステップは、その単元において、生徒に身につけさせたい教育目標のリストアップや、教材の選択配列・教授法・媒体の割り付けなどを行ない、学習指導の細案を作成し、教室に臨み、生徒の様子を読みとり、指導細案のどのコースをとるかを判定するステップである。第二は、教師の情報提示活動で、単に教師が一方的に生徒に対し、解説・説明・演示をすることだけでなく、生徒に対する反応・喚起・情報などの提示も必要です。第三は、生徒の情報受容で、生徒が経験を基にし、どんな情報で、何を意味しているかを受けとめるステップです。第四は、生徒の情報処理で、すなわち、判断したり、照合したり、計算したり、推論したりするステップです。第五は、生徒の反応であり、処理結果をノートに書いたり、意見を発表したりするステップである。第六は、生徒の反応に対する教師の診断や、情報受容である。第七は、評価であり、生徒の反応と、教授目標とを比較し、両者のズレの種類・程度などを知り、ズレの程度が小さくなって来ているかなどを判定するのである。第八のステップは、教師のKR情報提示である。KRとは、フィードバックにあたる学習心理学上の用語であり、このKRにより、生徒は自らの反応の結果を知ることができるのである。教師が生徒の反応を評価し、「正しかった」「もう少しだ」「すばらしい」など、評価結果を、そのまま提示したり、感想をのべたり、目標とのズレを知らせたり、にっこりほほえんだりすることで、生徒は、自分のすることを教師が受け止めてくれていることを知り、学習を積み上げていく意欲がわいてくるのである。以上の八つのステップの繰り返しが、教授学習過程であり、1)2)3)で教師から生徒に「行き」、4)の情報処理のあと5)6)7)で生徒から教師に「帰り」、1)をへて8)3)と「また行く」というように、教師と生徒の間の情報が、「行って、帰って、また行く」という関係が成立していなければならないのです。私達教師は、自らの授業を省みて、この八つのステップを効率よく展開するため、多様な生徒に対応した教材研究など、授業改造の工夫に努めるべきではないでしょうか。
(県立塙工業高等学校教諭)
賽君に学ぶ
押山文子
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昭和五十七年、四月十二日、五十六名の新入園児を迎えての入園式、五十六名の入園児の中に、一人中国名の男の子がいた。名前は王春、中国から引き揚げてきたのである。
彼の入園は私達に大きな動揺を与えた。彼が入園するという知らせを受けた時、真っ先に心配したのは、言葉が理解できないことであった。中国語がわからない私達に、果たして保育ができるのであろうか。皆目、見当もつかないまま、不安はともかく私達は彼を迎える準備をし、入園式を迎えたのである。
背が高く、ガッチりした、りこうそうな、日本人と変わらない、かわいい子という印象でした。父、王岐峻、母◆桂芝、両親はどちらも優しそうで、父親はたどたどしい日本語で話しながら、それでもどうにか意味が通じて、明日からの園生活について説明したのを記憶している。母親は、私達が言葉が通じなくて不自由しているのを十分承知していて、愛敬をまじえたヂェスチャーと態度を示してくれた。ヂェスチャーまじりの母親との会話や父親の片言の日本語で、どうにか意志の疎通がなされた。父親は、日本人で、戦時中、中国から引き揚げてくる時に、事情で現地に残され、現地で育ち、二人の子どもをもうけ、今度、日本に永住する決意で帰国したのである。とにかく、子どもが慣れるまで母親が毎日付き添って登園するということで、賽君の園生活はスタートしたのである。
担任はあたたかく迎え、一つ一つ生活の仕方を教えた。二、三日もたつと日常のあいさつなどできるようになったが、言葉の通じない彼への指導は大変なものであった。母親を仲介に担任の涙ぐましい努力が始まった。中国語会話の本を買い求め、テレビで中国語講座をみる担任の姿に刺激を受け、私もともに本を買い、講座をみた。母親からも日常必要な中国語の単語など
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