教育福島0095号(1984年(S59)10月)-043page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

−文部省学術情報システムについて−

 

県立図書館

司書 箭内克臣

 

図書館コーナー

 

図書館コーナー

 

新図書館がオープンして早や三ケ月、あの開館へ向けての図書の整理のあわただしさや開館時の混雑そして予想以上の利用者が訪ずれた日々が過ぎ、今は静けさを取り戻し、館も一息といったところです。

本図書館の開館時期は、学校の夏休みと重なったため、多くの利用者で混雑し、学生生徒の皆さんは、閲覧席の少なさを感じられたことでしょう。開館と同時に座席獲得のために猛ダッシュ。カードケースの角に頭でもぶつけはしないかと心配しておりました。

また、一般成人の方々には、多忙な仕事の合い間をぬって読書や調査研究にと来館してみれば、席は学生生徒諸君に占められ、なかには図書館の資料を使って勉強しているようでもない諸君もいる。いろいろご不満もあったことでしょう。

図書館は、図書館資料を使って調査研究学習をする場所との考え方に基づいて設計されております。混雑時は学生生徒諸君にかかわらず、席のみの利用は御遠慮願わねばなりません。

 

ところで、本館での業務の一つに逐次刊行物の担当業務があり、それに関連して、最近、学術情報システムが大きな関心をよんでいます。

たとえば、医大図書館においては、医学及び関連領域の専門雑誌を出来るだけ多く収集しておりますが、そのうち本館でも収集しているものは、五誌ぐらいでしょうか。本館は性格上専門化が難かしく、それを行なえば膨大な量の資料を収集しなければなりませんもちろん国内発生の情報だけでは研究は成り立ちませんので、国外の資料も収集しなければなりません。もっとも、雑誌や図書がすべてデータベース化され、電話回線を通じて、端末機から必要な情報を取り出す時代になれば、図書館がせっせと雑誌や図書を収集する必要はなくなり、図書館自体成立しなくなる日がくるかもしれません。特に雑誌論文のウェイトの大きい自然科学系の図書館では、情報は雑誌や図書に記されるのではなく、光ディスク等に収納され、端末機からアウトプットする。近い将来、情報の何パーセントかは、そうなることでしょう。

 

大学図書館に関連して少し述べれば、第一線の研究家の悩みは、近年増大する学術情報の中から必要な情報を適切に選び出し、原文を迅速に入手することの困難さにあります。つまり、我が国の学術情報システムの立ち遅れが、研究の発展を阻害している状況が現在あります。この解決のため、文部省は、昭和五十五年一月の学術審議会答申の「今後における学術情報システムの在り方について」に基づき、学術情報スステム構想を実現に向けて着実に進めております。その一つには、データベースサービスがあります。二次情報データベースによる文献、数値、図形等の情報検索が行なえるようになる、いわゆる文献検索です。数分で十年分ぐらい検索します。マニュアルではとても出来ないことです。それから、一次資料の所在情報データベースにより、必要な資料の所蔵先を知り、端末から即座に相互貸借の申込みが行なえるようになります。具体的には、所蔵データの提出が昭和五十八年十一月に行なわれました。提出データは和文雑誌のみでしたが、将来は、単行本等も自館の端末よりデータベースに入力するようになります。学術情報システムは、資源共有の考えの下に、互いに協力し、構築していくシステムです。国内に所蔵していない国外の有用資料も、各分野毎に拠点図書館を設け、計画的に収集をはじめました。

 

一次情報の網羅的収集もシステムの重要な柱です。学術情報システムが完成するのは、十年先かもしれませんが、一歩一歩進んでおります。調査研究のウェイトの大きい県立図書館としても、学術情報システムとどのように関わるか今後検討すべきことと思われます。

 

 

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。